ITmedia NEWS >

20世紀フォックス参加の真相、ソニーのBD戦略――ソニー・西谷常務に聞くInterview(2/3 ページ)

» 2004年10月20日 10時38分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 米DVD EXCLUSIVEの調査によると、米国におけるDVDタイトルの売り上げシェアにおいて、SPEは12.3%で4位、フォックスは11.9%で5位、MGMは6%で7位。3社合計は30%余りだ(なお、出典元や集計条件は不明だが、松下電器産業の小塚雅之氏(AVCネットワーク社ネットワーク事業グループ技術戦略担当参事)は、CEATEC2004においてDVDタイトルにおいて3社合計が46.1%に達するとのプレゼンテーションを行っている)。

米映画スタジオ別のDVD販売シェア(出典、DVD EXCLUSIVE)

 最終的には23.0%のワーナーブラザーズ、18.1%のウォルトディズニーカンパニーの動向が鍵になってくるだろうが、ワーナーはパッケージコンテンツビジネスの現場部門が、ディズニーはグループトップがHD DVD寄りと見られており、完全にすう勢が決まったわけではない。

 「MGM買収は米国側で行っているため、(BDタイトルが出荷できるかなど)状況はよく分からない。フォックスに関しても、われわれがビジネスに関して口を出す立場ではないため、現時点でシェアうんぬんを考えるのは適切ではないだろう」と西谷氏。

 しかし「ソニー(が推進するBD陣営)とSPEがBDの仕様に関して話をしていても、身内で勝手に仕様を決めているようにしかハリウッド関係者には見てもらえない。しかしわれわれ(BD)との資本関係が全くないフォックスがフォーマット策定に深く関わることで、見方はずいぶんと変わってくる」と、フォックス参加の“意味の大きさ”を西谷氏は強調する。

 その上で、「ハリウッドのウィッシュリストからは分からない細かなコンテンツホルダーの要求を、これまではNDAベースで詰め込んでいかなければならなかった。しかし、フォックスがBDAに正式加盟したことで、オープンな場で内容を煮詰めることが可能になった。フォックスがハリウッド関係者への窓口になって、BDに関する情報が正しく伝わっていくことを期待している」と西谷氏は話しており、HDD DVD陣営とのハリウッド保有タイトルの“取り合い”ではなく、映画業界に向けてのオープンな情報発信役という点で、フォックスに期待しているようだ。

BD-ROM対応レコーダー/プレーヤー提供の時期は?

 今年初めからの一連の動きの中で、BD-ROMをめぐってさまざまな仕様の変化があった。著作権保護の仕組みは録画規格のBD-REで採用されているものとは異なる方式(AACS)が採用される。さらにより圧縮率の高いアドバンストコーデックの採用も、今年になってから決まったものだ。

 まずAACSに関しては、「BDがROM向けの唯一の著作権保護規格として表明することはありません(独禁法違反になるおそれがあるため)が、ソニーも松下もAACSに参加しており、採用することになるでしょう。これに関するコストアップや開発の遅れはありません」(同氏)

 一方、アドバンストコーデックに関しては、「HD映像向けデコーダを開発している半導体ベンダーが3社あるが、来年の春ぐらいにエンジニアリングサンプルが登場するタイミング。来年末に最終製品を発売するのは厳しいのではないでしょうか」(西谷氏)

 そう前置きした上で、西谷氏は「しかしわれわれに関して言えば、自社開発のデバイスで(年内に正式決定する)BD-ROMのアプリケーションフォーマットに対応する準備は進めている」と話す。

 アドバンストコーデックは、H.264/AVC High-ProfileとマイクロソフトのVC-1が採用されることになっている。H.264に関しては、ソニーを含め多くの家電企業が半導体への実装を進めて来たことや、すでにMPEG委員会での正式承認も得ていることから、開発の進捗も予想できる。

 しかし、VC-1に関してはインターレスプロファイルの策定などに手間取り、年内にやっと細かい仕様が確定する状況だ。このような状況では、いつROM再生可能な機器が登場するのか、全く読めない。

 ソニーは1号機の発売以来、ファームウェアのアップデートで最低限のユーザーニーズに対応してきているが、1層23Gバイトの録画オンリー、HDDなしで来年末まで戦うのか? 以前、西谷氏は、年末にはROM再生をサポートする2号機を考えていると話していたが、その後のROM仕様変更でその話も流れた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.