プラズマテレビ“VIERA”を展開する松下の辻原氏は「私自身が感動したディスプレイはCRT。その性能にプラズマ/液晶はまだ到達していない。CRTのスペックにたどり着いて、初めて“表現画質”や“感動画質”というのを語れるようになる。(またこれからのディスプレイは)“情報”と“情緒”という相反するものを表現しなければならないので難しい」と訴える。
パイオニアの志保沢氏が目指すのも“感動画質”だ。「感動画質を作るには、バランス感覚が必要。映画でもいろんなシーンがあるが、それぞれで美しくなるようにするバランスを重視している」(志保沢氏)
プラズマテレビ“Wooo”立ち上げ時から画質作りに携わっている日立の青木氏は「目指すのは引き込まれるような映像。今年のテーマは『奥行きの美学』だが、そのポイントとなる立体感にはコントラスト/階調/映像のキレが必要。映像を見ながら引き込まれるような絵作りを心がけている」と述べる。
はからずも、各社が異口同音にしたのが「感動を与える画質作り」。ここに、これからのテレビが目指す方向性が見えてきそうだ。
感動の絵作りを行うためには、絵作りの基本となるリファレンスモニターを各社とも用意しているはずだ。各社が画質追求のために使っている“最高のディスプレイ”は何だろうか。
麻倉氏が最高のディスプレイとして挙げたのは、ソニーのマスターモニター「BVM-2012」。そのほか、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターを映像チェックに使用するところは、さすが“画質の鬼”たる所以だ。
各テレビメーカーでも「ソニーのマスターモニター」(セイコーエプソンとパイオニア)、「CRTのマスターモニターだが、メーカーは聞かないで欲しい」(松下)、「我々もブラウン管中心でチェック。ただしマスターモニターは透過率を落としたり白茶けていたりするので家庭用テレビ(ソニーWEGAシリーズ)を使っている」(ナナオ)と、各社ともブラウン管モニターを“最高のディスプレイ”に挙げている点が興味深い。
絵作りのときは各社のプラズマを並べている、という日立の青木氏も「自宅では極力ブラウン管を見るように心がけている。プラズマばかり見ていると、(映像が)そういうものなんだとなりがち。家でリラックスして見るときには、ブラウン管でプラズマの弱点を再確認している」と述べる。
「現時点で“最高のディスプレイ”は、やはりブラウン管ということになるだろう。なかでもソニー製のマスターモニターの人気が高かったのは納得できるところ」(麻倉氏)
さて、自社製品の画質を徹底的に追求するために、視聴チェック用として観ているコンテンツが気になるところだ。
「私のリファレンスは、映画では定番の『シェークスピア・イン・ラブ』、人物はNHK BS hiに出たときの“あやや”(松浦亜弥)が最近のお気に入り。みなさんはどうでしょうか?」(麻倉氏)
「麻倉先生同様に『シェークスピア・イン・ラブ』ではチェックしている。もう一つが『オータム・イン・ニューヨーク』。冒頭に出てくるリムジンの艶のある黒、セントラルパークの紅葉、主演女優(ウィノナ・ライダー)の肌色の再現性と、病気が進行して顔色が悪くなっていくところの表現などをチェック項目にしている」(セイコーエプソン・古畑氏)
「私は『エイジ・オブ・イノセンス』。冒頭の低階調の中で赤色が出てくるところの表現、ロウソクの灯りでヒロインの顔を照らし出すといった難しい映像表現がしっかり出ているかをチェックしている。そして最近気づいたのは『ファインディング・ニモ』。グラデーションの表現など、カメラで撮影する以上に映像表現が凝っており、これを意外とキッチリ出しているテレビは少ない」(ナナオ・橋本氏)
「最近は『レジェンド・オブ・フォール』を使っている。チャプター2〜3のあたりのインディアン登場シーンで、ものすごい暗い場面で炎がピカッと光るシチュエーションがある。この部分で、コントラスト/階調/色再現性すべてをチェックできる」(松下・辻原氏)
「パイオニア自身で作成したハイビジョン/NTSC素材のテストディスクでチェックすることが多い。映画では『シェークスピア・イン・ラブ』や、暗いシーンは『パニック・ルーム』などでチェックしている」(パイオニア・志保沢氏)
「あまり大きい声ではいえないが、実は我々もパイオニアさんのテストディスクを使っている(会場爆笑)。そして偶然にも麻倉先生と同じ“あやや”のコンテンツで、肌色や背景の階調、服のディテールなどをチェックしている。意外とお薦めなのが相撲中継。肌色の階調、客席のディテール、土俵まわりの色再現性などがチェックできる」(日立・青木氏)
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