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液晶より安く、画質は同等――無機ELテレビは2006年登場

» 2004年10月27日 19時42分 公開
[IDG Japan]
IDG

 カナダのディスプレイ技術企業が、液晶TV並みの画質でもっと安いTVを実現するフラットパネル技術の商品化に近づいている。

 トロントに本拠を置くiFire Technologyは、2005年10月までにこの新技術を使ったパネルのプロトタイプの製造を計画しており、このパネルを使ったTVを2006年には各国で販売したいと同社のアドバンスエンジニアリング担当ディレクター、和迩浩一氏は東京での取材で語った。

 同社によると、同社の厚膜誘電体無機EL(TDEL)技術は10〜40インチ、さらには50インチのディスプレイパネルに適用できるが、同社としては最初に30インチ程度のパネルを製造するつもりという。

 「30インチ台半ばはホットな分野であり、最も成長している市場だと考えている」と同氏。

 TDEL技術は、2つの電極層にリン光体の層と誘電体膜をはさんだ構成になっている。これにより非常に薄いパネルができ、液晶パネルよりも30〜50%製造コストが下がると和迩氏は説明する。

 37インチパネルの場合、TDEL技術を使えば、視野角170度、最高輝度500カンデラ/平方メートル、コントラスト比500:1で厚さ2センチのパネルを使ったTVを作れるとiFireは主張する。消費電力の目標値は200ワットで、寿命は4万時間以上という。

 これに対してシャープの最新37型AQUOSは、最高輝度は450カンデラ/平方メートル、視野角170度、コントラスト比800:1、消費電力160ワットだと同社広報担当は話している。この製品の厚さは約10センチだという。

 和迩氏によると、少なくとも日本の大手企業2社がTDEL技術に関心を示しており、そのうちの1社はiFireのプロトタイプ製造を支援している。

 三洋電機は2002年7月、TDEL技術の商品化に向けた技術協力を開始した。大日本印刷はiFireがトロントに試験工場を建設するのに1000万ドルを援助した。

 この工場の建設は10月に始まった。大日本印刷はこの工場に電極と誘電体膜を供給する予定だと和迩氏は言う。

 三洋電機は、複数の企業(社名は明かされていない)が製造したパネルを使ったプラズマTVと液晶TVを販売している。同社はiFireの技術に感銘を受けたと同社の広報担当リャン・ワトソン氏。だがiFireの技術を使ったTVを製造するという契約にまでは至っていないという。

 「当社は技術開発契約を結んだが、投資は行っていない。iFireが優れた技術を有していることは認識しており、(TDELの)シンプルな構造には感銘を受けている。この技術はフラットパネルTV技術の候補の1つだが、現時点では当社は何も決めていない」(ワトソン氏)

 今年5月に、iFireはシアトルで開かれたSociety for Information Displayで、34インチのプロトタイプを披露した。和迩氏によると、試験工場では、量産体制が整っていることを示すために34インチパネルを数百枚製造する予定だ。同社は現在、製造工場の建設(場所は未定)に資金を提供する投資家を探しているところだ。

 「日本、韓国、欧州のほとんどのエレクトロニクスメーカー、中国のTVメーカーと話し合っている。年間に20万〜25万枚のパネルを製造できる最初の工場を作ることを目指している。それには1億5000万ドルほど必要だろう」(和迩氏)

 最初の工場の目標は、TVメーカーが34型TVを同サイズの液晶TVよりも15〜20%少ないコストで作れるようにすることだ。その後、この工場で30インチ台の違うサイズのパネルを製造するかもしれないという。

 iFireはまた、2つ目の工場を建設するために6億ドルの資金調達を検討している。この工場では、年間で200万〜300万枚のパネルを製造する可能性がある。もっと大きな工場を建てれば、最初の工場よりも安くTVを作れるだろうと和迩氏は語る。

 「TDELは、フラットパネルTVを作りたいが、工場にあまり多くのお金をかけたくないというTVメーカー向けだ。2〜3年のうちにTDELが店頭に出回るようになるだろう。購入者には、技術のことは考えずに、画質と値段を見てほしいと言いたい」(同氏)

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