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デジタルAVの潮流は「ブラウン管画質/全録/ホームネットワーク」

» 2004年11月02日 21時52分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 「CEATEC JAPAN 2004」「WPC EXPO 2004」「FPD International 2004」と10月に開催された3つの展示会では、AV製品の今後の方向性を指し示す製品・デバイス・技術が数多く紹介された。

 このほど行われたRWプロダクツプロモーションイニシアティブ(RWPPI)定例ミーティングの特別講演で、デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏が、CEATEC/WPC/FPD Internationalで見つけたデジタルAV製品の最新トレンドを語った。

photo デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏

 3つの展示会では取材・執筆活動だけでなく、基調講演、セミナー講師、セッションの司会進行をこなすなど精力的に活動していた麻倉氏。そこから導き出した最新トレンドのキーワードが「ブラウン管画質」「全録」「ホームネットワーク」だ。

ポスト「ブラウン管画質」最右翼の薄型テレビは「SED」

 プラズマ/液晶など薄型テレビの台頭で、ブラウン管は過去の遺物となりつつあるが、その画質はいまだに重要な位置にある。各メーカーの画質担当者が“テレビ画質へのこだわり”を語ったFPD International 2004のパネルディスカッションでは、参加したパネリストが異口同音「ブラウン管をリファレンスにして画質を作っている」と答えた。

photo FPD International 2004のパネルディスカッション

 そのこだわりの画質を引き継ぐ“ポスト・ブラウン管画質”の最右翼がSEDだ。FPD International 2004のセミナーで東芝のSED開発担当者が語ったSED開発のきっかけも“ブラウン管画質の追求”だった。

photo CEATECで一般ユーザーにお披露目されたSED

 「プラズマ/液晶という薄型テレビの流れにSEDが加わるのは時間の問題。2007年にディスプレイ革命が訪れる。そこでSED(FED)や有機ELといった自己発光型デバイスがブレイクする。これからのテレビは感情、情感、情緒を表現できる“新画質”を身に付けなければならない。こうした表現力では、ブラウン管のような自己発光型が最も有利。ブラウン管と画素型の良さを結合したSEDこそが“新画質”の資質を兼ね備えたディスプレイ」

「全録」の時代

 ディスプレイが変われば、テレビの視聴スタイルも変わる。麻倉氏は“HDDレコーダーの究極型”として、CEATECでお披露目された「バイオ type X」を紹介。バイオ type Xには、3チャンネル同時録画が可能な専用ボード「X3ビデオサーバー」を2枚搭載しており、計6チャンネルの番組を最大で24時間×9日間分(長時間モード)録画できるというお化けマシンだ。

photo バイオ type X

 「全チャンネルを全部録画することが、これからのHDDレコーダーの流れ。私はこれを“全録”と名付けた。全録の取り組みは以前から日本電算機が試みていたのだが、ソニーがバイオ type Xで行ったアプローチはすごく単純で、HDDの半分をLinuxで動かしている。つまり、type Xの中に全録HDDレコーダーが入っているということ。来年ぐらいに全録の流れが家電AV製品にも来る」

 「全録」時代が始まるとEPGというシステムは必要なくなり、代わりに“マイニング(mining=採掘)”という概念が重要になってくると麻倉氏は力説する。

 「最近のレコーダーはEPGを使った“おまかせ録画”や類語辞典の活用などで“録り逃し”をなくそうとしているが、全録ではすべて録画してしまうので録り逃しはなくなる。そのかわりHDD内の膨大な録画データから観たい番組を見つけ出すHDDマイニングが必要になってくる」

 ちなみに麻倉氏の造語「全録」は同氏が強く著作権を主張しているので、メーカー各社は取り扱いに注意しよう。

ホームネットワークがいよいよ“本物”に

 ホームネットワークでは、DLNA(デジタル・リビング・ネットワーク・アライアンス)に普及の兆しが見え始めたと麻倉氏は語る。

 CEATEC会場のHALL 1中央に設けられたDLNAのブースでは、複数のメーカー間の機器がDLNAの推進するガイドラインの上で、お互いのコンテンツを共有して再生できるというデモンストレーションを実施。松下のDIGA「DMR-E500H」やソニーVAIO typeXなどDLNA対応機器が一堂に会して、次世代ホームネットワークの本命となるべく歩んでいる状況を紹介していた(別記事を参照)。

photo CEATEC会場に設けられたDLNAのブース

 「DNLAが登場した時、どうせ第二のHaViになるのでは、と思っていたのだが、真面目にやる企業が増えてきて、いよいよホームネットワークが“つながる”時代が来る予感がしてきた。昨年のCEATECでのDLNA発表会の時には、もっと強制力を持たないと普及しないのではと提言したのだが、今年はかなりのメーカーがCEATECに対応製品を並べ、ブースも活気づいていた」

 ただしデジタル時代のホームネットワークはつながって当たり前で、そこから先が今後の課題であると麻倉氏は述べる。

 「アナログ時代でもネットワークにつながっていたのだから、デジタルはつながって当然。つながった後、そこからどうするのか、どのようなメリットがユーザーにあるかを示さなければダメ。それにはネットワークの操作性がポイントとなる。ネットワークを見渡すGUIのようなものが必要になってくる。そのあたりをクリアすれば、今後のデジタル家電に必須のフューチャーになっていくだろう」

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