さてお待ちかねの実際のサラウンド音響だが、試聴には例によって「スターウォーズ エピソード1」と「ファインディング・ニモ」を使用。半信半疑でアタマにヘッドフォンを装着すると、エピソード1のポッドレースでは意外にも音の移動感がしっかりと出ているのに驚いた。また、ファインディング・ニモの水に包まれるような独特なサウンドの表現も十分健闘している。
そして何より楽しかったのが、バイブレーション機能。ヘッドフォンでは腹の底に響くような重低音などいくら頑張ってもムリなのだが、このシアター5.1chヘッドフォンは、サブウーファーの出力に合わせてハウジング部をビリビリと振動させる機能を装備しており、これが従来のサラウンドヘッドフォンにない魅力を作り出しているのだ。大音量が続くと、振動で耳がかゆくなってくるのはご愛嬌だ。
だがやはり各スピーカーが密集しているためか、想像した通りリアのサラウンド感が希薄で、前から後ろに抜けていくようなサウンドではかなり物足りなさを感じた。それよりも気になったのが、各チャンネルの音量のバランスの悪さ。なんとかできないものかとケーブルをふと見ると、ボリュームスイッチがあるではないか。
しかもフロント/リア/センター/バイブレーション(サブウーファー)と、各チャンネルごとに音量が設定できるようになっている。そして、この調節機能が意外とツボにはまったのだ。
例えば、爆発のシーンなどに耳をビリビリさせたいときは、バイブレーションを上げることで音量を増やさずに爆発感を満喫できる。またセンターの音量をぐっと絞ることで、セリフが目立たなくなり周囲の音の雰囲気がぐんと浮き上がってくる。もちろん、センターを上げて他を絞ることで騒音が大きくて聴き取りづらかったセリフを聴きやすくすることも可能だ。
AVアンプやDVDプレーヤーの設定をいじらなくても、手元で気軽に各チャンネルのパワーをコントロールできるのがこんなに面白いものだとは思わなかった。見慣れた映画でも、このシアター5.1chヘッドフォンを使うことで新たな発見がありそうだ。
お手頃価格ゆえに全体のチープさは否めず、長時間使用すると少々疲れが残るのは確かだが、従来のサラウンドヘッドフォンにない魅力が溢れているのも事実。「AV専門メーカーが本気になって作ったら意外と受けるのでは」と、秋の夜長に耳をビリビリさせながら、ふと思いをめぐらした。
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