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3つのコア技術と保存性を追及したDVD-R「HG」――マクセル年末、このDVDメディアで映像を残す(1)(1/2 ページ)

» 2004年12月10日 01時02分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 なにかと見たい番組が重なる年末に活躍するのがHDD/DVDレコーダーだが、気が付くと「HDDがいっぱい」になんてこともよくある。そんな時にはDVDに記録して保存することになるのだが、仮にDVD-Rを買いに出かけたとしても、各社がさまざまな製品を発売しており、目移りしてしまうのが現状だろう。

 値段だけが判断基準となりがちな録画用DVDメディアの選択だが、その製品中には各社それぞれのノウハウや技術が息づいている。そこで、今回から5回に渡って、各メーカーに自社製録画用DVDメディアの特徴について語ってもらうことにした。第1弾となる今回は日立マクセルを取り上げる。

予習――DVDメディアのできるまで

 録画用DVDメディアの製造工程は、大まかに言って「スタンパの作成」と「メディア製造」の2つに分けられる。

 DVD-RやDVD-RAMなど、製造するDVDメディアによって細かな違いがあるものの、まずはスタンパでDVDメディアの「金型」となるマスターを製造し、そのマスターを利用してメディアを大量生産するという流れは変わらない。

 大量生産時にはメディアの素材であるポリカーボネードを円盤状に成形する「基板成形」、そして「記録色素の塗布」、「反射層の生成」、「ダミー基板との張り合わせ」、「プリフォーマット」、「印刷・仕上げ」という過程を経る(DVD-Rの場合)。

photo メディアの「もと」になるスタンパ

3つのコア技術で高品質を追求

 「高い品質の追求・維持が第一と考えており、それを達成するために“HGXスタンパ技術”“基板成形技術”“高密度記録膜技術”という3つのコアテクノロジーをメディア製造に投入しています。その上でDVD-Rには長期保存を含めた、トータルでの長寿命化を狙った製品としてHGシリーズをラインナップしています」

 そう語るのは同社 情報メディア事業本部 事業企画部 六崎久晃氏だ。高品質を支える技術として、「HGXスタンパ技術」「基板成形技術」「高密度記録膜技術」の3点を挙げているが、具体的にはどういったものなのだろうか。

 「DVD記録の場合、レーザー照射によって生じる熱の影響を考慮した熱設計が不可欠になるのですが、この点については、スタンパで刻み込むメディア記録面上の微細な“溝形状”がかなりの影響を与えます。DVDメディアの溝の“金型”であって、DVDメディア製造工程のもっとも上流にあるスタンパは重要です。そこでの精度が製品の品質に大きな影響を与えるのですが、その制御には高度な技術が必要です。」(六崎氏)

 HGXスタンパ技術は、この“溝”を刻む際の微細な加工技術を指す。精度の高いスタンパをから作り出されるメディアは、ノイズレベルが低く、信号干渉の起きにくいクリアな再生信号を実現するという。

 もちろん、金型となるスタンパの精度が高くとも、メディア成形が不完全ではゆがみが発生してしまい、データの読み書きが困難になる。同社ではサブミクロン単位での制御によってゆがみの少ない成形を行っている。これが2つめのコア技術「基板成形技術」だ。

 「当社では20年程前から光ディスクの製造を続けており、成形時の温度・圧力などにさまざまなノウハウを蓄積しています。非常に安価なメディアではクオリティに問題があるケースが見受けられますが、この成形時の精度の低さが原因になっていることも多いようです」(六崎氏)

photo DVD-Rメディアの垂直方向変位量。より平面に近いメディア(左)の方が安定した読み書きが可能。「ガラス板のように反りもゆがみもない、そうした状態が理想的」(六崎氏)。「内周は大丈夫でも、外周部の記録で失敗するメディアでは、左のような形状になっていることが多いです」(記録メディア事業グループ 事業企画部 副参事 石塚康弘氏)
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