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“100倍”強いTDKの「超硬」――本当にどこまで強いのか年末、このDVDメディアで映像を残す(2)(2/2 ページ)

» 2004年12月14日 01時32分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 この超硬で施されるハードコートは、帯電防止についても従来品に比べて高い放電性能を実現し、チリやホコリの付着を押さえることができるほか、ディスク表面の摩擦係数が低くできるため(従来品は1.19、ハードコードは0.44)、指紋などの汚れ自体が付きにくい。

photo 人工指紋機による指紋付着実験の結果。ハードコート処理を施した方(右)は指紋が付きにくい

 「車で言えばワックスをかけた状態といえます。汚れが完全に付着することがなく、表面から浮いた状態になるために、ふき取りやすく、レーザー光への影響を低く抑えることが可能なのです」(鶴河氏)

 超硬シリーズの製品は、「記録面の硬質化(傷自体の付きにくさ)」「帯電防止(傷や読み書きエラーの原因となるチリ・ホコリの付着防止)」「潤滑性(安全に汚れがふき取れる)」というアプローチで保存性能の向上を図っているが、DVD-Rメディアにとっては光(紫外線)も悪影響を及ぼす要因になる。

 メディア表面(上面)にも処理を施すことによって耐光性を高めた製品も存在するが、同社では一部の製品に「UVプロテクト基板」を採用することによって、耐光性を高めている。このUVプロテクト基板は、ディスク材質の樹脂に紫外線を通しにくい着色剤を添付したほか、その着色剤自体の色や濃度を調整することによって、「レーザーの透過率は高いが、紫外線は通しにくい」というメディアを実現している。

 そうした「保存」へのさまざまな工夫が凝らされたメディアだが、実際のところ、どれくらいの期間に渡って保存できるのだろうか。

 「長期保存についてはさまざまな要因があるので、正確に“何年もちます”とは申し上げにくいのですが……。10年後の状態を疑似的に作り出す加速試験が可能なので、一般的な保存条件ならば10年間は大丈夫だと思います。ちなみに、物理的な面だけに限れば、30年の保存が可能だという報告も受けています」(鶴河氏)

 「仕方ないことですが、“キレイに録れる”や“長期保存可能”など抽象的な表現しかできない状況は歯がゆく感じます」という鶴河氏だが、「超硬」に含まれるさまざまな技術は同社の長期保存にかける意気込みを具現化したものといえる。

 超硬に用いるコーティング材は非常に高価なもので、1枚あたり100円近いコスト増は避けられないそうだが、「DVDメディアはより日常品に近い製品になっていく」(鶴河氏)という状況の中で、同社ではより幅広い製品群へ、超硬で培われた技術を投入していく考えだ。

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