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手軽さが売りの“2.1chかんたんシアター”――松下「SC-HT03」レビュー:フロントサラウンド特集(1/3 ページ)

» 2005年01月17日 16時34分 公開
[浅井研二,ITmedia]

 松下電器産業では、自社の薄型テレビやプロジェクターとの組み合わせられるように、ホームシアター・サウンドシステムを積極的に展開している。その中で“2.1chかんたんシアター”として提供しているのが、「SC-HT03」だ。実売価格も4万円前後と、まさに手軽にホームシアターを構築するのに最適な製品といえる。サイズやスタイルからして、比較的大型のプラズマテレビと組み合わせ、リビングに設置することが主に想定されているようだ。

photo パナソニックの“2.1chかんたんシアター”「SC-HT03」。スリムスピーカーとサブウーファー、アンプで構成。コンパクトな製品ではないが、フロアスタンドが付属するので薄型テレビと組み合わせての設置に適している

 この「SC-HT03」では、ドルビーバーチャルスピーカーを採用し、フロントスピーカー2chとサブウーファーのみでサラウンド音響を出力する。5.1chソースはドルビーデジタルのほか、DTS、AACにも対応し、すべてをドルビーバーチャルスピーカーモードで再生可能。また、2chソースに関しては、ドルビープロロジックIIで5.1chデコードしたうえで、ドルビーバーチャル化できる。

 ドルビーバーチャルスピーカー技術には、実際にリスニングルームで5.1ch音響を鳴らした場合、各スピーカーからの直接音および間接音(壁からの反響音)がどのように融合して、左右の耳に届けられるかを分析した結果が反映されている。

 つまり、スピーカーが5本(あるいは、それ以上)置かれていたとしても、最終的に耳は2つしかない。人間は脳内でその左右の音の違いを分析して、音の方向や空間を認識するわけだ。ならば、5chソースに対して演算処理を行い、リアル5chで左右の耳に入る“音質的特徴”を再現・付加したうえで2chに落とし込んでやれば、理論上は2本のスピーカーだけでも、サラウンド再生は可能ということになる。

 ただし、右耳用と左耳用の音が耳に届く前に混ざってしまうと意味がなくなるので、クロストーク・キャンセルという手法で音を相殺し、右耳には右スピーカーの音しか聴こえないように処理を行う。そのため、必ず左右のスピーカーから等間隔の位置で聴かなければいけない(前後はあまり気にする必要はない)。左右にずれてしまうと、サラウンド効果は失われるというわけだ。このリスニングポイントの自由度の低さは、導入時にリアル5.1chと比較検討する場合には考慮すべき点といえるだろう。

 製品は細身のフロントスピーカー2本と、2.1ch分のパワーアンプを内蔵したサブウーファー、そして、コントロールアンプ(パワーアンプ非搭載なので、とても軽い)で構成されている。フロントスピーカーは細身で、本体だけでは自立しない。標準付属のフロアスタンドを取り付けるか、または、壁に掛けて使用する。なかなか個性的な構成で、しかも、実用的だと思う。

photo フロントスピーカーには組み立て式のスタンドが付属

 スタンドは組み立て式だが、作業はさほど難しくない。円盤状のベースにパイプフレームを差し込んで、裏側からネジ2本で固定し、パイプ部へスピーカーを取り付ける。トールボーイスタイルとは異なり、高さ調節ができる点がよい。また、ケーブルは土台部分からパイプの中を通して、スピーカーへ接続できる。ただ、一部を隠せるとはいえ、スピーカーケーブルは付属品でよく見かける肌色の安っぽいタイプで、シルバー仕上げのスピーカーやサブウーファーとマッチしない。ケーブルの質はともかく、色は黒かグレイのほうがよいのではないだろうか。

photo スピーカーケーブルはパイプの中を通り、スタンドの最上部から出ている
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