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スカパー!がインセンティブを支払い続けなくてはならない理由(1/2 ページ)

» 2005年01月21日 12時27分 公開
[西正,ITmedia]

インセンティブは下がらない

 スカパー!のチューナーを例に取ると、家電店に支払うインセンティブ(販売奨励金)が、あるラインより下には下がらない事情が見えてくる。もちろん、サービス開始時に比べると、インセンティブのコストは低下している。しかしながら、市場販売価格も下がっているため、インセンティブの負担は決してなくならない構図がある。

 家電店の立場からすると、利益率が高く、かつ高額の商品から積極的に売っていこうとするのは当然のことである。儲からない商品を作る者もいないし、そんな商品を売ろうとする者もいない。スカパー!のチューナーのように、普及が進むにつれて市場販売価格が下がってきた機器については、何らかのインセンティブがなければ、家電店として積極的に販売していくメリットが見出せなくなってしまうのだ。

 とはいえ、スカパー!としては、引き続き家電店にチューナーを売ってもらい、新規加入者を増やしていかなければならない。だから、家電店側の販売メリットを落とすわけにはいかない。

 また、スカパー!は“説明商品”としての性格が強い。スカパー!にとっての“商品”とは、チューナーそのものというよりも、「どういうジャンルのどういうチャンネルがあるのか」ということになるからだ。

 このため新規加入者を募るためには、家電店の店員に対する講習会を全国各地で定期的に行うことが欠かせない。売り場にいる店員に参加してもらうためには、家電店の協力を要する。そうしたことも踏まえて考えれば、家電店に対して、スカパー!のチューナーを売ることのメリットをアピールしていくことが不可欠になるのは当然過ぎるほど当然の話だろう。

 その辺の事情が、受信機の普及についての心配が要らない地上波とは決定的に異なる。同じ放送事業でも、フリーテレビとペイテレビには普及のモデルにおいて、非常に大きな違いがあるのだ。

 加えてスカパー!が家電店にインセンティブを支払うことが欠かせないのは、家電店側からみると、今やスカパー!のチューナー単体はそのままでは逆ザヤになってしまっているからである。市場価格は9800円程度まで下がっているのに対し、メーカーの卸売り価格は1万3800円程度といわれている。つまり、普通に販売していたら小売店は一台当たり4000円のマイナスが生じるのだ。

 それでも利益が出るようにするためには、スカパー!から家電店に6000円か7000円、あるいは1万円くらいのインセンティブを支払う必要がある。

 こうした構造は、スカパー!のチューナーに限らず、わが国の家電業界全般に共通して見られるものでもある。放送業界で言えば、地上波局はテレビの販売に対してインセンティブを払う必要はないが、スカパー!、WOWOW、CATVなど、独自のボックスを必要とする事業には、そのまま当てはまる。三波共用のデジタルテレビが普及していくことが期待されるのも、スカパー!110やWOWOWにとって受信機を普及させるためのインセンティブの負担が不要になるからだ。

 そもそもスカパー!のチューナーに関して言えば、市場価格が1万円を切った段階から、もはや価格が下げ止まり、高くなっていくことはあり得なくなった。一方、メーカーの卸売り価格は、少しずつ下がっていくにしても、ある水準から下には絶対に下がらない。

 同じ製品を作り続けるわけではなく、次世代機、さらに、その次世代機を開発していくため、それなりに開発費がかかってくるからだ。卸売り価格は、量産効果が働くことによって、ある水準までは下ってくるかもしれないが、ある水準まで下がったら、次には、新しいボックスの開発費が乗ってくる。だからそれ以上、下がることはないという理屈である。

日々変わる金額設定と今後の買い替え対応の問題

 インセンティブの金額にしても、常に同じ価格を支払っておけば良いということにはならない。

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