ITmedia NEWS >

「NIRO」に込められた中道流“シアターサウンド”劇場がある暮らし――Theater Style(2/6 ページ)

» 2005年02月04日 09時59分 公開
[浅井研二,ITmedia]

 現在では、ドルビーバーチャルスピーカーの登場により、フロントサラウンドを採用した手頃な製品も増えてきた。やはり、ホームシアターが広く一般に普及するためには、設置条件での“歩み寄り”が不可欠ということなのだろう。しかし、次の段階で導入希望者の脳裏に浮かぶのは、「本当にフロントだけでサラウンドが再現できるのか?」という問いかもしれない。つまり、技術的な裏づけはどうなのだろう。


中道氏: たしかに、最初はドルビーも含め、さまざまなバーチャルサラウンド方式も検討しましたが、いずれもどこかしら不満点があり、最終的には自前で開発しようと決心しました。つまり、100%オリジナルの技術で、他社との連携もまったくなし。独力で、3年間の開発期間を費やしました。

ITmedia: 5ch分のスピーカーを1ユニットに収めるという点は、最初から考えていたんですか?

中道氏: そうですね。映画を観るときに、主人公の音声はセンターチャンネルから出力されます。それをバーチャルで作ると、リアリティに欠けてしまう。そこで、センターという軸をしっかり持たせつつ、最小限の構成を考えました。また、開発の際には、どこのメーカーの製品、どこの技術と比べてどうこうではなく、“映画館と同じ”を目指すようにしています。映画館の前から3分の2あたりで聴いている感じを、自宅へ持ってきたかったのです。

photo

 とはいえ、映画館で再生されている音声と、まったく同じものがDVDに収録されているわけではない。そこで、中道氏は、映画スタジオや編集プロダクションが立ち並ぶ米国西海岸へ飛び、音のプロフェッショナルたちを訪ね歩いたという。

 映画のサウンドを設計するスタジオでは、ディスクリートサラウンドのモニター環境を用意しているが、そうした場所ではスピーカーはもちろん、イスすらもアンカーで固定されている。つまり、聴ける位置がピンポイントで、1箇所しかない。しかし、そうして厳密にセッティングされた視聴環境であれば、サラウンド効果は絶対的で、しかも、映画館と同じように、どのスピーカーが鳴っているかは意識させることなく、音はあらゆる方向から飛んでくるという。


中道氏: つまり、それが完全な方向感を持ちつつ、全チャンネルが見事に「つながる」という、理想的なサラウンド環境。そうした環境では、スピーカーが存在する位置すら、リスナーに意識させないものです。でも、そんな厳密な視聴環境を家庭で再現するのは無理でしょう。設置場所やリスニングポイントだけでなく、部屋の形状や大きさにも左右されます。ならば、5本のスピーカーを一箇所に集めればよいのではないかと。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.