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オプティキャストの躍進(1/2 ページ)

» 2005年02月04日 11時03分 公開
[西正,ITmedia]

オプティキャストの強み

 オプティキャストは2004年中に出そろった感のある有線役務利用放送事業者の中の一社だが、他の事業者が、自社と関連性の強い通信会社の回線のみを使用するスタイルを取っているのに対し、唯一、どこの通信会社とも組むという姿勢を一貫させており、最も電気通信役務利用放送法の立法趣旨に適った存在であるとも言える。

 オプティキャストの強みは、光波長多重技術や、光ファイバーの二芯を使うことにより、映像配信とIP通信を切り分けていることから、地上波やBSの無料広告放送を再送信できるところにある。有線役務利用放送事業者の多くがIP放送を行っているため、多チャンネル放送、IP電話、VODサービスを中心に展開しているのに対して、オプティキャストの場合は地上波、BS(デジタル放送を含む)の再送信を行える点でライバル事業者各社より加入者を募りやすい形になっている。

 逆に言えば、既存のCATV事業者からすると、サービス面での競合度合いが高いことから、より警戒される面が強くなっているのは間違いない。オプティキャストとしては、CATV事業者との間で無用な衝突が起こらぬように、CATV事業者がサービス展開していないエリアから事業基盤を広げる形を採っている。

 これまでのところ、基本的に集合住宅向けにサービスを提供しているのは、戸建てに比べて採算を確保しやすいこともあるが、CATV事業者との競合が起こりにくいという理由も大きかったはずである。

 しかし、昨年末辺りから、オプティキャストのサービス展開が、明らかに強化されてきている。その典型が、広島県福山市、福島県郡山市への進出だ。

 実は、全国レベルで見た場合、CATV事業が行われていない都市を人口の多い順に並べると、第一位が広島県福山市、第二位が福島県郡山市だと言われている。両市への進出を「躍進」と表現したのは、まさに、そうしたピンポイントを捉えたものであることに加えて、何と言っても、新たに戸建て展開を始めたことが注目されるからである。明らかに、戦略的にエリア展開が進められていることが伺える。

福山市、郡山市への進出

 福山市でのサービス展開については、中国電力の100%子会社であるエネルギア・コミュニケーションズ(以下エネルギアコム)と組んで行うことになった。

 すなわち、エネルギアコムが保有する光ファイバー網を利用して、オプティキャストが提供するスカパーの有料多チャンネルサービスと、地上波、BS(デジタル放送を含む)再送信を行うこととした。これまでは集合住宅に限定したサービス提供を行ってきたが、福山市では、集合住宅に加え、戸建て住宅に対するサービス提供を初めて実現することになった。オプティキャストのスタンスである、映像配信とIP通信を切り分けて送信する手段としては、一芯の光ファイバーによる波長多重技術が用いられた。

 エネルギアコムは各住宅まで光ファイバー網を構築し、オプティキャストに回線を提供する。オプティキャストが放送用受信拠点(ヘッドエンド設備)などを構築し、エネルギアコムの回線を利用してユーザーに多チャンネル映像配信サービス(約280 チャンネル)を提供する。 総務省への申請手続きの完了を前提として、広島県福山市において、2005年度早々より試験サービスを経てサービスを開始することになった。

 もう一方の福島県郡山市への進出は、同市におけるCATV事業の企画会社であるインフォメーションネットワーク郡山(以下INK) が実施する第三者割当増資により新たに発行する議決権付普通株式を、オプティキャストが引き受ける形を採った。オプティキャストは、INKの発行株式のうち66.7%を保有する筆頭株主となる。

 両社は、郡山市における多チャンネル放送とインターネット通信などのサービスを提供するCATV事業会社を設立する。放送サービスでは、福島県内で2005年末に開始予定の地上波、BS(デジタル放送を含む)、FM 放送に加えて、オプティキャストが提供するスカパーの多チャンネル 放送、コミュニティ情報チャンネルなどを提供する。

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