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「BDに負ける要素は見あたらない」――東芝・藤井常務に聞く連載:次世代DVDへの飛躍(1/2 ページ)

» 2005年02月10日 00時38分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 ゲーム機やカムコーダーなど、応用範囲の広さを強調することの多いBlu-ray Disc(以下BD)陣営。一方、HD DVDは“映画会社のためのコンテンツ販売メディア”という印象が強い。BDのような多目的展開という点について東芝はどのように考えているのか。前回に続き、東芝の執行役上席常務でデジタルメディアネットワーク社長の藤井美英氏に話を聞いた。

光ディスク録画のニーズは本当に大きいのか?

――2005 International CESのプレスカンファレンスでは1テラバイトHDD搭載のハイブリッドレコーダーの登場を予言しましたが、一方で録画メディアとしてのHD DVDは、再生専用機よりも後回しになっているようにも感じます。ハイビジョン録画ニーズに関してはどのように見ているのでしょうか?

 「正直にいえば、光ディスクへのレコーダー機能はなくてもいいのでは? と考えています。大容量のHDDがあって、そこでタイムシフト再生出来れば大抵のニーズをカバーできます。もちろん、蓄積した番組の一部は、DVDやHD DVDに残したいと考える人もいるでしょう。しかし、現在のハイブリッドレコーダーの使われ方を見ていると、そうしたアーカイブのニーズが高いとは考えにくい。ですから、HD DVDにとって優先順位が高いのはコンテンツのパッケージ化を行う環境作りなんです」。

――しかし、HD DVD-RW(ARWの名称はRWに変更された)の1層20Gバイト/2層32Gバイトはともかく、HD DVD-Rの1層15Gバイトは少なすぎるのではないでしょうか。

 「ええ。ライトワンスメディアは、われわれもスタートに近い段階で2層化が必要だと考えています。しかし、これはBDとHD DVDのメディア開発戦争ではありません。両者の商品戦略の違いです。われわれはHDD容量が今後も向上していき、そこに録画していく使い方が前提で、アーカイブ用途はさほど重要とは見ていません。これだけHDDの容量単価が安くなっている中、今後もずっと光ディスクに保存する製品が続いていくのか? という疑問があります。デジタル放送時代の東芝の商品戦略は、HDDをさまざまな映像機器に内蔵させていくこと。録画ニーズの大半はそれでカバーできますし、必要ならば2層のHD DVD-Rに収めればいい」。

――確かに北米市場などを見れば、アーカイブ用途で録画するユーザーは少なく、HDDを用いたタイムシフト需要ばかりです。しかしその背景には、市場環境の大きな違いがあります。多チャンネル化が進み、再放送が多く、DVDビデオの販売価格も安い北米と、その正反対の日本市場は比べられないのでは?

 「日本のコンテンツはテレビ番組が中心で、録画で残す人が多いといわれています。とはいえ、それでも最初からDVDに録画している人はあまりいません。一旦HDDに記録してからDVDを作っています。それに、コンテンツをもっと安く販売できる環境を作れば、アーカイブ用途はさらに減っていくでしょう」。

 テレビシリーズのボックスパッケージが数万円、DVD1枚あたりでも4000円近いなど、日本のDVDパッケージは価格が高い。アニメなど、まるで「マニアしか相手にしてません」と宣言しているかのような値付けも目立つ。また、DVDのレンタルビジネスが大きなものになっている点も北米とは異なるだろう。北米並みの値付けをするには障害も多いが、もしHD DVDが北米のDVD並みの価格で販売されるのであれば、確かに録画ニーズはさほど大きくならないかもしれない。

 たとえばコピー保護技術が進歩して簡単に複製できなくなれば、“DVDはレンタル可だが、HD DVDはレンタル不可、その代わりにHD DVDの方が売価は安くなる”ような流通の枠組みも作れるかもしれない。であれば、藤井氏の話すような“光ディスクへのアーカイブ”が不要な市場になる可能性も否定できない。映画スタジオの支持も多いHD DVDプロモーショングループが、本気で日本でも北米型の市場環境構築を目指すのなら、藤井氏のシナリオも決して非現実的とは言えないのだろう。

5年前ならBD側が間違いなく正しかった

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