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巨大地震対策としての「第二東京タワー」構想(2/2 ページ)

» 2005年02月18日 11時50分 公開
[西正,ITmedia]
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 東京直下型の大地震に備えるには、さいたま市に地の利があるようにも思えるが、いずれにしても運営に当たっては、これまでの豊富なノウハウを有している日本電波塔の力を必要とすることは明らかであろう。

 新たに建てる以上は、600メートル級の高層タワーにすることが望ましいのは言うまでもない。地上波デジタル放送の目玉とも言えるワンセグ放送の、電波による直接受信の環境を整える効果があるからだ。

 もっとも、ワンセグ放送の受信環境だけを考えると、さいたま市が不利だと言われているが、それよりもむしろ防災的な見地を優先させることは、建設費用のこと一つを取ってみても大きな意味を持っていると言えるだろう。

 この「防災的な見地」からの建て替えを目指す点でも、超高層タワーを建設する必要性は高い。火の見やぐらの役割も果たすことになるからである。超高層タワー上に定点観測のカメラを設置しておけば、首都圏を一望することができる。

 仮に、放送機能が麻痺することがなくとも、せっかくのワンセグ放送が真価を発揮するとすれば、どの地域への延焼が激しいかを伝えることも可能になるし、そうなれば避難する人にとっても煙の中に迷い込むことなく、自分の向かうべき方向を把握することができるようになる。

 震災時に衛星波が強みを発揮することは間違いない。FTTHもCATVも寸断される危険は免れないからだ。しかしながらBS放送にしても、現段階の視聴可能世帯数のレベルでは地上波の代替は務まらない。期待されるモバイル放送にしても、利用者数のレベルを相当に引き上げないことには、まだまだ十分に機能するとは言い難い。

 NHKと民放キー局各社は、2005年1月を目処に、各候補地の技術的な側面からの審査結果をまとめ、3月には建設地が決定されることになる。

 世界一危険な都市という烙印が押されてしまった以上、建設地の選定に当たっては、ワンセグ放送の利便性を増すためという理由付け以上に、防災的な角度からの検討が重要になると思われる。

 地上波放送事業が規制に守られてきたため、競争原理の働きにくい側面を指摘する声が強まっているが、その拠って立つ事業の公共性の高さが改めて認識され直すことになれば、そうした指摘が的を射ているとは言えない。第二東京タワー建設については、経済的な側面からだけでなく、日本一の電波塔に代替する物を作るという、高度な意識を持って選定作業が進められることを期待したい。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「モバイル放送の挑戦」(インターフィールド)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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