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ホームシアターにおける「サラウンドの基礎知識」劇場がある暮らし――Theater Style(3/4 ページ)

» 2005年02月18日 23時59分 公開
[本田雅一,ITmedia]

DVDのサラウンドフォーマット

 さて基本中の基本。DVDに収められているサラウンド音声のフォーマットについても簡単に触れておこう。DVDにはリニアPCMやMP2などの他、5.1チャンネル用としてDolby Digitalが採用されている。Dolby DigitalはAC-3という音声圧縮方式を用いており、5.1チャンネルが最大448Kbpsで収められており、CDなどでも使われるS/PDIF端子で伝送できる。DVDでは必須の音声フォーマットのため、どんなDVDプレーヤーでも必ず再生可能だ。

 劇場用のDolby Digitalとも互換性があるため、劇場用のサラウンドトラックが、ほぼそのままDVDに収められることが多い。ビットレートが低く抑えられているのは、Dolby Digitalが元々フィルムに光学的に焼き込む事を目的に作られているため。この辺りはドルビーの歴史について触れたコラムで詳しく書いている。

 これに対して規格上はオプションに設定されているのがDTS。家庭向けのDTSは、S/PDIFで保証されている最大ビットレートの1.5Mbps(実際にはもっと高いビットレートも伝送可能になっているが、保証値は1.5Mbps。S/PDIFが元々CD用に開発されたもので、CDのビットレートが1.5Mbpsだから)をフルに使った高品質の5.1チャンネル音声を収められる。

 ただしDVDに収められているDTSは、ほとんどの場合1.5Mbpsではなく768Kbpsのハーフレート(対して1.5Mbpsはフルレートという)と考えていい。ハーフレートと言っても、ドルビーデジタルに比べればビットレートが高いため、より高音質にすることが可能。

 DTSデコーダは、やや低域を膨らませ迫力を出して再生させる傾向があるため、音質以前に同じDVDならばDTSの方が迫力を感じるだろう。セリフの滑らかさではDolby Digitalの方が良い事もあるが、両方のフォーマットで収められているなら、大抵はDTSを選んでおけば高音質になる。

 なおDTSはDVDのオプション仕様であるため、DVDプレーヤーやAVアンプによっては、その再生がサポートされない場合がある(最近の民生機ならほとんどサポートしているが、PC用の低価格DVDプレーヤーの中にはサポートしないバージョンも多い)。

 これらに加えてDolby Digital EX、DTS-ESといった規格もある。両者とも6.1チャンネル音声を扱うための規格だ。Dolby Digital EXは左右サラウンドチャンネルに、位相を変えてミックスしたサラウンドバックチャンネル(真後ろのチャンネル)を追加したもの。未対応のプレーヤやAVアンプを用いた場合は5.1チャンネルで再生されるが、対応デコーダが内蔵されていればサラウンドバックが追加される。ただし、6.1チャンネル以上(サラウンドバックにスピーカーを置いている構成)でなければ無視される。

 DTS-ESはやや動作が異なり、DTS-ES MatrixではDolby Digital EXと同様の仕組みで動作するが、DTS-ES Discreetの場合はエクステンションフレームを用いることで、独立した1チャンネルが通常のDTSに追加される。

 DTSは周波数帯域を分割し、それぞれの帯域ごとに圧縮後のフレームが作られる。このフレームを順に並べたのがDTS信号だが、基本のDTS信号(コアという)に加えて、拡張(エクステンション)フレームを追加できる。DTSデコーダは必ずコアの再生が可能なため、エクステンションで1チャンネルを追加したとしても、コア部分だけは再生できる下方互換性が実現できるわけだ。

 同じ仕組みはDTS24/96という規格でも利用されている。DTS24/96は、ハーフレートのコアフレームに768Kbpsのエクステンションフレームを追加し、24ビット/96KHzの高解像度音声5.1チャンネルを1.5Mbpsの帯域に収めたもの。コア部分の互換性は確保されていないため、DTS24/96に対応していないDTSデコーダでもコア部分(16ビット/48KHz)だけの再生は行える。

次世代フォーマットでも大丈夫

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