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iPod“コバンザメ”より「母屋」勝負――携帯型プレーヤーの“意外な”トレンドCeBIT 2005(1/2 ページ)

» 2005年03月14日 07時15分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 CeBITは巨大総合展示会としてIBMやSun Microsystemsなどエンタープライズ向け製品・サービスや、キャッシュディスペンサーメーカーなど金融機関向け製品を生業とする企業、そして大手家電メーカーなども展示を行う。特に米国では総合展示会で見かけることがほとんど無くなっているIBMが、巨大なブースを構えていたのが印象的だ。

 しかしCeBITがとてもユニークなのは、大手メーカーに混じって台湾や中国のPCパーツベンダーが軒を並べることだ。ASUSやArima(RIO WORKS)、大同といった台湾でも大手のベンダーになると、ソニーやNECなどと同じホールに並んで出展し、ODM用ノートPCのリファレンスデザインはもちろん、マザーボードやグラフィックカードが並ぶといった具合だ。

 これはドイツで自作PCが好まれる傾向が強い事も関係しているだろうが、さらにPC関連の展示ホールに進んでみると、そこはまるで台湾のCOMPUTEX Taipeiを思い起こす小宇宙。当然、ユニークな製品が並んでいることを期待するが、短期間の取材ではなかなか面白製品も見つからない。

 しかしある程度の傾向は見えてくる。その中でも“意外”に感じたのは携帯型デジタルプレーヤーのトレンドである。

意外に少ないiPod“コバンザメ”

 昨年、iPodの出荷が急激に伸びたことや、欧州でのiTunes Music Storeサービス開始などを受け、iPodの成功の周辺でビジネスをするベンダーが増えているのだろうと想像していたが、意外にiPod対応製品を扱うベンダーは少なかった。もちろん、BMWがiPod用のオーディオ接続ケーブルキットを発売するなど、市場全体を見ればiPodの周辺ビジネスは活発だが、アジア系ベンダーが得意とする“コバンザメ商品開発”にはつながっていない。

 ひとつにはiPodユーザーが、オンラインのApple Storeなどを起点に欲しい製品を探すケースが多く、キワモノ的商品が成り立ちにくいという事情もあるのかもしれない。そもそも、シンプルで気の利いた使い勝手や品質、デザイン性など、エモーショナルな部分でのアドバンテージが要求される周辺ビジネスは、元々アジア系ベンダーの得意とするところではないのかもしれない。

 ではアジア系ベンダーはどこに行くのか? というと、軒先を借りて商売をするのではなく、自ら母屋を建てて(本体を開発して)ビジネスを行う企業が多いのだ。iRiverやiAudioといった、無名から成功を収めた企業を見て、そこで自分たちも商売ができると考えているのだろう。

母屋を狙う理由

 しかしMP3オーディオプレーヤーの価格競争は激しい。MP3プレーヤーがマニア向け商品だった時代とは異なり、これだけマーケットサイズが大きくなってくると大量に部材を仕入れ、大量に販売できなければ、本体で儲けを出すことはなかなか難しいのではないか?

 そんな質問を台湾や中国のベンダーが集まるパビリオンでしてみると「周辺ビジネスより本体をやるほうが、ずっと利益は大きい」という答えが返ってきた。特にフラッシュメモリを採用した製品は、フラッシュメモリ自身の価格低下に伴って利益を確保しやすくなっているという。容量の割に安価と言われるiPod Shuffleでさえ、利益は3割ほどあるというから、アジア系ベンダーにとっては“母屋”のほうが商売はやりやすいのかもしれない。

 機能面を支えるファームウエアも、プレーヤーを構築するためのチップベンダーが開発ライブラリーを提供しているため、部材を調達さえすれば、あとはちょっとしたカスタマイズとバグ取りで容易に本体を開発できてしまうという。知恵を捻ってユニークな製品を生み出すよりも、お手軽に作れる母屋を自ら構える方がずっとアジア系ベンダーにとっては効率的というわけだ。

 なにしろ、面倒なソフトウェア開発や音楽配信などは考えなくとも、大手ベンダーがやってくれる。マイクロソフトがPlays for sure戦略で、Windows環境との互換性を高める努力をしてくれているから、それに乗っかるという手もある。

 ただ、すでに携帯型デジタルプレーヤーの分野で利益を上げ、ブランド力と資金力を蓄えてきた一部の先行ベンダーは、すでに次の段階に移行しようとしているようだ。

高付加価値製品を模索

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