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米国のジャンクFAX規制法に緩和の動き?

» 2005年04月28日 15時26分 公開
[Caron Carlson,eWEEK]
eWEEK

 かつてFAX機からは一方的に送られてくる迷惑広告が溢れ出ていたものだが、そうした状況もここ数年は落ち着いてきた。1991年にジャンクFAXを禁じる法律が施行されたことや、幾つかの訴訟のおかげでジャンクFAXの送信者が恐れをなしたことによる影響だろう。一方的な広告をFAXで送信する前に書面による同意を義務付ける連邦法が7月に施行されれば、こうした動きはさらに減退するだろう。ただし、一部の業界からの苦情を受けて、連邦議会の議員らが規制緩和に向けた動きを大急ぎで進めている。

 上院で審議される法案では、既に取引関係がある相手に対しては同意書の規定を免除する除外条項が成立する可能性がある。その場合、FAX送信者は受信者が今後のFAX受信を断る(オプトアウト)ための無料の方法を提供し、FAXを送信するたびに、オプトアウトに関する情報を分かりやすい方法ではっきり明示しさえすればよいことになる。

 上院の商業科学運輸委員会(Senate Committee on Commerce, Science and Transportation)は今月、この除外条項によってジャンクFAXの水門が開かれることになるとの懸念を払拭するための修正項目を加えた上で、Junk Fax Prevention Act of 2005においてこの除外条項を承認した。

 バーバラ・ボクサー上院議員(カリフォルニア州選出・民主党)は同意書に対する除外条項を制限するよう強く求め、次のように語っている。「上院で制限緩和を許さなければ、ジャンクFAXは7月1日で終わる。私がどこかの店に行って、何か品物を買ったからといって、その店が今後永久に私にFAXを送信してかまわないということにはならない。私は彼らを家に招いているわけではない」

 米国の多くの職場では既に電子メールがFAXに取って代わっているが、一部の業界では依然として、顧客との迅速なやり取りをFAXに依存している。例えば出版社は、標準料金表やマーケティングデータ、広告の校正刷りなどをFAXで相手先に送信している。同意書のデータベースを作成し、維持しなければならなくなれば、かなりのコストがかかるだろう、とNews-Register Publishingの社長兼発行者ジョン・ブラダイン氏は語っている。

 「書面での同意書を義務付けられることになれば、当社の広告部門は毎日過労で倒れてしまうだろう。米連邦通信委員会(FCC)の命令ということになれば、顧客の生活を邪魔してまで同意書にサインしてもらわなければならなくなる」と同氏。

 不動産業者は、物件のリストや市場分析など、各種の複雑なデータを、ときには実際に会う前の段階で顧客に送信することもある。前もって書面での同意書を入手するとなれば、非常に複雑でコストも掛かるだろう、と米不動産協会は議会に訴えている。

一歩前進、それとも一歩後退?

 米不動産協会の代表で、アラスカで不動産仲介業を営むデイブ・フィーケン氏は次のように語っている。「これは、顧客サービスにおいて迅速さが重要となるビジネスにとっては、大きな後退を意味する。不動産の売買手続きは依然として、FAXに依存している」

 一方、多くの小規模企業のオーナーや経営者にとって、そして一部の不動産業者にとっても、それまでに取引をしたことのある店やレストラン、銀行、保険会社、ホテル、保健所、航空会社などが無制限にFAXを送信できてしまう時代に逆戻りするというのは、気の滅入る見通しだ。

 不動産仲介業者の免許を今年取得したジム・サットン氏によれば、同氏のFAX機は今ではかつてほど迷惑広告に妨害されることはないという。だが同氏は、妨害されるような事態になる前に同意が必要なはずだと考えている。

 「誰かが私の家に入ってきて、私の機器を許可なく使っているようなものだ。メキシコでのバカンスや株売買、保険の勧誘など、FAXが次から次に送られてくる」と同氏。

 FAXで不要なローンを勧めてきたとしてサットン氏がFAX送信者を提訴してからは、こうした問題も緩和されてきたという。だが同氏は今でも、法律に違反していると考えられるFAX送信者に対しては、積極的にその旨を知らせている。また、不動産業者仲間がこの法律の規制の緩和に取り組んでいることにも反対している。

 「不動産業者は、一度でもオープンハウスを訪れ、挨拶を交わした人に対しては、それから10年はジャンクFAXを送ってもいい、というようにしたいのだ」と同氏。

 ボクサー上院議員は、たとえ議会が、既に取引関係がある相手に対しては同意書の規則を除外するという法案を通過させたとしても、一方的なFAXを長期的に送り続けるような行為は防止したいと考えている。上院で審議される法案には、取引関係の持続期間を制限する権限をFCCに与えるという内容の、ボクサー議員が提案した修正項目が含まれている。

 さらにボクサー議員は、今後のFAX受信を断りたいFAX受信者からの依頼を受け付けるためにFAX送信者に義務付ける電話応対時間の延長にも成功している。この措置を今月提案したゴードン・スミス上院議員(オレゴン州選出・共和党)は、「修正版は中道を行くものとなっており、多くのユーザーにとって、仕事や日常の連絡が取りやすくなるだろう」と語っている。

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