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ゴールドのかかとを持った考える靴「アディダス・ワン」(1/4 ページ)

» 2005年06月27日 00時00分 公開
[竹村譲,ITmedia]

テクノロジーとスポーツのブリッジとして登場した「アディダス・ワン」

 勝つことがすべてであるかの様なグローバルビジネスの世界にあって、徹底的にWIN型人間の育成を目指すものの、今ひとつ説得力のない人材センターが横行している。一方、ベストワンより「オンリーワンを目指せ!」と、一見して負け惜しみのようにけしかける同業者も溢れている。

 「勝ち負け」は戦って初めて結果の出るモノだが、日本では幸いなことに、殆ど大多数の人間が初めから戦ってもいないのに「どっちもどっち」だと思う筆者のように醒めた人間が多いのも事実だろう。もちろんオンリーワンではない人間が地球上に存在しないことは当たり前だ。

 しかし、勝ち負けとは関係なく、毎日のように多種多様な製品が生まれて溢れ出るビジネスの世界では、新製品の位置づけ(ポジショニング)は極めて重要な問題だ。この考え方はすべてのアスリートのための専門メーカーであるアディダスも同様のようだ。

 その同社が2001年から3年以上をその研究と開発に注ぎ込み、2005年の春、やっと製品化に辿り着いた「adidas_1(アディダス・ワン)」というインテリジェントシューズは注目に値するプロダクトだ。この製品が目指す、アスリートのための「オンリーワン型インテリジェント・シューズ」という、従来に無いポジショニングは、マーケット・インのストラテジーとしては興味深い。

photo adidas_1。ヒール部分を始めあちこちにゴールドをあしらった個性的なカラーリング

 「インテリジェント・シューズ」という新たな市場を作りだし、その中で勝ち残るためには、堅固な「アディダス」というブランドの上にテクノロジーのイメージをナチュラルに拡張、定着させることが求められる。きっと単一のプロダクトだけではなく、複数の兄弟製品が必要だろうし、ターゲットユーザ層のセグメント選択も重要だ。挑戦を受けてくれるコンペティターの存在も鍵となるだろう。

 筆者も過去、薄型カード電卓とPCカードをくっつけた「ChipCard」のコンセプト構築や、Linuxベースの腕時計である「WatchPad」などを企画・製品化した経験上、あるカテゴリーの製品が異なるカテゴリーのテクノロジーによって、その活躍の幅をより広く広げることには諸手を挙げて賛成だ。

 アディダス・ワンは、「人間が走る」というスポーツを科学的に分析し、その自然な動きを出来うる限りサポートするという発想の元に開発された、「シューズ自らが感じ、考え、判断し、最適化を目指して動作する」という画期的なアスリートの為の「ハイテクノロジー・インテリジェント・シューズ」なのだ。

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