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頭の上のブラックホール?――JAXA相模原キャンパス一般公開っぽいかもしれない(3/3 ページ)

» 2005年07月25日 18時25分 公開
[こばやしゆたか,ITmedia]
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 会場を回りながら、あちこちで「あれはもう見ました?」って声が聞こえてたのが「レールガン」だ。レールガンというのは物体を電磁誘導(フレミングの左手の法則)で加速して打ち出すというものである。

 理論上、電流値を増やしていけばいくらでも加速ができるというものであるのだが、相模原キャンパスのレールガンは最大射出速度7.8キロメートル/秒という世界最高級の速度を誇るものなのだ*7。これをつかって、宇宙船にデブリがあたったときの様子を調べたり、かわったところではフラーレン(C60)に衝撃を与えてサッカーボール結晶構造に変化を与える実験に使われたりしている。

photo レールガン

 右の焦げ茶色の細長い部分がレールガン本体。ここからポリカーボネート製の弾を左の水色の実験室のなかに打ち込むというのが本来のスタイル。

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 でも、今回は「はで」のために室内ではなくその手前で板を置いて弾を受けてしまう。そのかわり、あぶないから速度は出さない。最大10キロボルトの電圧をかけるところを1.5キロボルトに抑える。それでも、これだ。

 第5会場は大きな部屋(構造機能試験棟)の中を緩やかに区切ったちょっと文化祭的なノリの展示だった。ここがおもしろかったのだ。最初にここにくればよかったと思うけど、そうしたらここだけで時間を使い果たしてたかもしれない。太陽風をうけて進むソーラーセイルの紹介、再使用ロケットの実験、薄い大気球などなどだ。

photo ソーラーセイルに使われるポリイミド膜

 これはソーラーセイルに使われるポリイミド膜。厚さは髪の毛の太さの5分の1。大きさは、これはまだ縮小サイズだけど、実際には直径100メートルのものを作るのだそうだ。

photo 折り目を曲線にした畳み方のサンプル

 打ち上げるときには、このセイルは畳んで巻き付けておくことになる。普通に畳んだのでは、巻き付けるときに、内側と外側の長さの違いで“しわ”が発生してしまう。そこで、巻き付けることを前提に、折り目を曲線にした畳み方のサンプルがこれ。ちょっと美しい。

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 これは、亜酸化窒素+エタノールロケットの試作機。安く、安全に飛ぶロケットの実験だ。

 最後の会場は風洞実験室。こんなような実験を見せてくれた。

 「イルカは高速に泳ぐために流線型をしています。人間は流線型ではありませんが、できるだけそれに近い姿勢をとることで速く泳げるようにしています。でも、イルカほどに速く泳げません。これは空を飛ぶときにもいえます。では、人間型のまま空を飛ぶとどうなるでしょう?」

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 「……これはウルトラマンの模型にマッハ2の速度の風を吹き付けたところです。つまりウルトラマンがマッハ2で飛んでいるときの様子です。これでわかるように、指先、頭、肩のあたりに、大きな気流ができてしまっていることがわかります。つまり、人間型のまま空を飛ぶというのは、あまり適切な方法ではないのです」

 一般公開は16時30分までだった。風洞を出てきて外の道を歩いて、道ばたのオブジェとか見ているとなんだか揺れている。なんか大きな車でもきたのかと思ったら、関東地方に震度5というあの地震だった(相模原は震度4)。最後にまたびっくりしてしまった。


*7*7 ライフル銃の射出速度が0.8〜1.0キロメートル/秒だそうだ。

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