驚きの3000:1に巧妙な絵作り――新・液晶テレビ「LN32R51B」

液晶トップベンダーのサムスンが、新開発パネルを使った液晶テレビ新製品を発売した。22〜32V型までの新ラインアップの中から、中核を担う32V型のダイレクト販売専用モデル「LN32R51B」の実力を探ってみた。

» 2005年08月16日 00時00分 公開
[ITmedia]
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 サムスンと言えば、言わずと知れた世界でもトップを争う液晶パネルベンダーだ。そのサムスンが新たに開発した高性能液晶パネルが、いよいよ製品に搭載されて登場する。元々、価格と画質のバランスに優れたサムスン製液晶テレビだったが、この新開発パネルによって、さらに価格性能比を向上させている。

 今回の新製品投入では22〜32V型の中型機が中心だが、その中でも中核を担う32V型のダイレクト販売専用モデル「LN32R51B」を試用できたので、さっそく紹介することにしよう。

photo 32V型液晶テレビのダイレクト販売専用モデル「LN32R51B」(画面はハメコミ合成です)

3000:1のコントラスト比とB-Sensorがもたらす高画質

 一度購入すれば数年〜10年以上は使うテレビだけに、まず気になるのは画質だろう。

 本機に採用されているSPVAパネルは1366×768ピクセルの高精細さで、通常のビデオ/Sビデオ/D端子とともにHDMIにも対応。VGA入力に加え、HDMIの動作モードをメニューからの切り替えることでDVI信号も正しい色で表示できるため、パソコンを接続して利用することも可能だ。

photo 背面装備された豊富なインタフェースの中には、今後のデジタル接続の標準となるHDMI端子が含まれている

 視野角は上下・左右ともに170度と十分なスペックで、コントラスト比は3000:1という液晶テレビとしては非常に高い値を実現している。実際の映像を見ると、視野角に関しては斜めからの視聴で、やや白味がかるところは見られたが、長方形の部屋の短辺に沿って、あるいはコーナー置きで利用する限りは、ほぼ不満を感じることはないだろう。

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シンプル・スリム・スタイリッシュな「V-Line」デザイン。ディープブラックカラーが高級感を演出している
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背面もシンプルながら機能美にあふれたデザイン。アーム取り付けや壁掛けが可能なVESA規格対応(ネジピッチ:200×200ミリ)

 3000:1のコントラストはシーンに応じたバックライトの制御「Dynamic Contrast」と、SPVAパネルの高コントラスト特性の組み合わせで実現されているものだが、加えてB-Sensorと呼ばれる光センサーが、実視聴環境における高いコントラスト感を実現している。

 Dynamic Contrastの効果は、低輝度シーンの多い映画で抜群の効果を発揮する。通常ならば暗く埋もれて見通しが悪いシーンも、バックライトを暗く制御した上で液晶パネルのコントラストを最大限に引き出す。明るいシーンに関しても、今度はバックライトを強めにすることで、朝日の強烈なまぶしさを演出。制御は巧妙で、バックライトの明るさがゆらゆらと不安定に感じることも無かった。

 B-Sensorはテレビが置かれている場所の明るさを計測するセンサーで、部屋の明るさに応じてバックライトの輝度を自動制御する。このため夜、暗めの照明下では黒浮きを抑えるために暗めのバックライト制御を行い、昼間の明るいリビングでは最大500カンデラの明るさを生かして白ピークを伸ばした元気の良い絵をもたらす。

巧妙な絵作りと”自分だけのカラー”を作り出せる自由度

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本体の厚さは99ミリと薄型

 一方、色あるいは絵作りに関しても、最新機種だけに従来の液晶テレビにありがちだった不満を解消する要素が盛り込まれており、それぞれ有効に機能しているようだ。

 固定画素方式のテレビでは、異なる解像度の放送をいかに上手にパネル解像度へと割り付けるかが重要だが、本機が内蔵するDNIeという機能はノイズ感を浮き立たせる事なく、像のエッジを綺麗に立たせる効果を生み出す。どうやら単純なシャープネス処理ではなく、きちんと信号の変化を読み取った上で、パネル解像度に適した空間周波数で画素間をつなぎ、極端なボケ感なく画像を拡大するようだ。特に通常の地上アナログ波の表示でその良さを実感できる。

 加えて色相間のつながりがよく、疑似階調が見えにくいのも美点のひとつ。デジタル処理で画像や色を拡張する場合、内部演算の処理誤差が蓄積したり、あるいはパネルへの階調の割付が不適切だったりといった理由で、疑似階調が出たり、ノイズ感が強調されてしまったりといった問題が発生する場合がある。

 ところが本機はアナログ信号に3Dコムフィルターを通した後、高精度の10ビットADコンバータでデジタル化。DNIe処理をフル10ビットで行うため、デジタル処理による情報量の欠落を最小限に押さえ込むことに成功している。

 絵作りの面でも、デフォルトの「ダイナミック」モードは、やや白飛びと黒潰れが目立つものの、「標準」モードは階調性もよくバランスが良い。やや色温度を抑え、コントラストも控えめにした「映画」モードなら、部屋を暗くしての映画視聴にも十分以上のバランス良い絵を見せてくれる。特に肌色のふくよかな描写は健康的で好ましい。

 このようにデジタル処理による弊害を抑え込んだ上で、さらにユーザーによる絵作りという新しい要素「My Color Control(MCC)」を盛り込んでいる。

 MSSは、空をイメージする「ブリー」、芝生や森をイメージする「グリーン」、肌色をイメージする「ピンク」の3つの色域を独立して調整できる。見るソースに応じて簡単に切り替える事が可能だ。

HDMI経由の音声再生にも対応、画質と価格のバランスに注目

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シンプルながら使いやすいリモコン

 本機のHDMI端子は音声信号の伝送にも対応している。HDMIは今後、様々なデジタル映像機器を接続する際の標準となっていくインタフェースで、一部のDVDレコーダー/プレーヤーで採用が始まっている。

 HDMI端子を用いた時の絵は鮮烈だ。ハイビジョンはもちろん、DVDも非常に高い精細感を伴った映像となる。これはDVD再生時にあらかじめ拡大しながらデコードを行い、高解像度にしてからデジタルで本機へと伝送できるためである。

 加えて音声もHDMIを通じてデジタル信号で伝わるため、映像と完全に同期しつつ、非常にクリアなステレオ音声を楽しめるのだ。しかも1本のケーブルに映像と音声の両方が載ってくるため接続もケーブル1本と非常にシンプル。

 本機はこの高音質を生かすため、SRS TruSurround XTを搭載し、内蔵の2チャンネルステレオスピーカーで広がり感のあるスケールの大きなサウンドを楽しむことが可能だ。


photo 2チャンネルステレオスピーカーは画面下部に装備。SRS TruSurround XTによるスケール感あるサウンドを楽しめる

 やはり、本機の魅力は最新のデジタル技術と最新の液晶パネル技術の組み合わせで実現した高画質をリーズナブルな価格で楽しめることだろう。本機にはデジタルチューナーが内蔵されていないが、D端子やHDMI端子にハイビジョン機器を接続すれば、ハッと驚くような高画質で映る事に気付く。内蔵の地上アナログチューナーでの映像も他製品との比較論で劣る点はないが、ハイビジョン時の絵の素直さ、階調の良さなどは格別だ。

 特に、既にデジタルチューナーを所有している、あるいはデジタルCATVのセットトップボックスを利用するといったユーザーには、デジタルチューナーレスながらハイビジョン入力時の画質に優れた本機が、画質と価格のバランスという面でも適しているだろう。現在は必要ないが、将来はハイビジョンをというユーザーにも向いている。

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