コラム
2005/09/05 08:30 更新

小寺信良:
誰も「本物のハイビジョン」を知らない (1/4)

デジタル放送の急速な普及で「ハイビジョン」が身近になった。だが“本物のハイビジョン”――つまり1080iのHDTV品質の映像は、実は誰も見ていないという現実がある。名ばかりのハイビジョンで、今後、画質論議を進めていいのだろうか。

 デジタル放送のメリットとして、放送開始当初は高画質だの双方向などいろいろ言われてきたわけだが、実際に視聴者が受ける恩恵で最も大きいのは、いわゆる「ハイビジョン化」であろう。今ではデジタル放送対応テレビといえば、ハイビジョンが映るもの、と相場が決まっている。

 細かい話をすれば、広く言われているこの「ハイビジョン」という言葉は、実は正確ではない。もともとこれはNHKが開発したアナログ高精細テレビ方式の通称であって、いわゆる現在のHDTV放送とは、解像度の定義なども全然違うのである。

 だが日本では既に1980年代末からこのハイビジョンという言葉が親しまれていたため、「高精細テレビといえばハイビジョン」ということで、現在に至っている。現在デジタルハイビジョン放送と言われている方式は、国際的にも技術的にもHDTVと呼ぶのが正しい。だがまあそんなことは我々映像のプロだけが知っていれば済むことなので、一般の方はこれまでどおり「ハイビジョン」でいいだろう。

 余談だが、筆者は1988年ソウルオリンピックのときに、NHKでアナログハイビジョン試験放送用の特別番組を編集したことがある。技術的な意義は大いにあったのだが、実際に見ることができた人はほとんど居なかったはずだ。それが今や、日本全国総ハイビジョン化に向けて動いていると思うと、感慨深いものがある。

 おっと本題の趣旨を忘れるところだった。今回はハイビジョンって言葉の意味を云々したいわけではないのである。

フルHDテレビの謎

 HDTV放送の方式には、大きく分けて2つがある。1080iと720pだ。デジタル放送が始まったときに、テレビのD端子の説明で既にこれらの数字はお馴染みだとは思うが、一応おさらいしておこう。1080iとは横1920ピクセル、縦1080ピクセルのインターレーススキャンである。一方720pは横1280ピクセル、縦720ピクセルのプログレッシブスキャンである。

 大きく分ければこの2つなのだが、NTSC圏とPAL圏ではSDTVとの互換性の問題から、フレームレートが違う方式へと分化している。さらにフィルムとの親和性を高めるための24pといったフォーマットもあり、実際にはかなり複雑だ。

 米国やヨーロッパでは、この1080iと720pが混在した状況にある。放送局や国によって方針が違うためだ。一方日本の放送においても、テレビ朝日が720pを強力に推進していた時期があって、話し合いが物別れになれば国内でも方式が二分される可能性もあったのだが、今後の研究課題として720pも残すということで合意し、最終的には1080iに統一された。

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[小寺信良,ITmedia]

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