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補償金制度廃止論にまつわる明と暗小寺信良(1/4 ページ)

» 2005年09月20日 00時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 これまで本コラムを含めITmediaでは、私的録画・録音補償金制度に関する動きを積極的に捉えてきた。具体的には文化庁の文化審議会著作権分科会 法制問題小委員会の成り行きを見てきた、ということである。そしてこの問題は今、急展開を見せようとしている。

 これまでの審議では、iPodを始めとする固定メディア型の音楽プレーヤーや、HDDビデオレコーダー、またはPCのHDDも私的録音補償金制度の対象とすべき、との意見書が提出されたことに対し、その是非から派生して、権利制限の見直しや補償金制度そのものへの見直しへと事態が進行しつつある。ここでは見直しというが、実質的には廃止へ向けての緩やかな移行というニュアンスを感じているのは、筆者だけではないだろう。

 この審議の経緯については、以下から閲覧やPDFでダウンロードできる。

・文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 審議の経過

 そして9月8日から、この経過報告の内容について一般から広く意見募集を募ることとなった。外側からうだうだ言うだけではなく、実際に郵送、FAX、電子メールで小委員会に意見を提出することができる、というわけである。期限は10月7日までとなっているので、今のうちにちょっと考えておいた方がいいだろう。

 筆者もこの件について、いろいろなところでいろいろな人の話を聞き、調べたりしてきたわけだが、取材を進めれば進めるほど、この補償金制度という実態の複雑さ、奇妙さに驚かされる。

 そもそも補償金制度は、著作権法のうち、私的使用の複製に関わる条文の中に盛り込まれている。補償金制度を見直すということは、イコール著作権法第30条の改正に直接つながっていく。ここでその第30条に目を通しておいた方がいいだろう。リンクとともに、下記にその全文を記しておく。

第5款 著作権の制限

(私的使用のための複製)

第30条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

1.公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

2.技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び第2号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

 《改正》平11法077

2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

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