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再び「世界のソニー」目指し、痛み伴う改革へ

» 2005年09月22日 19時31分 公開
[小林伸也,ITmedia]

 ソニーは9月22日、2007年度までの中期経営方針を発表した。エレクトロニクスの再生を掲げ、(1)テレビやデジタルカメラなど重点領域への集中、(2)カンパニー制の廃止、(3)固定費の15%に当たる2000億円のコスト削減──などが柱。1万人の人員削減という痛みを伴う改革を断行し、2007年度に連結売上高8兆円以上、連結営業利益率5%が目標だ。

中期経営方針を発表するストリンガー会長(左)と中鉢社長

テレビ再建に全力、HD化を推進

 本年度第1四半期に363億円の営業赤字を計上した同社エレクトロニクス事業。「テレビの復活なくしてソニーの復活はない」(中鉢良治社長)として、特に深刻なテレビ部門の再建に全力を挙げる。

 大画面テレビのブランドを「BRAVIA」に刷新した上、開発拠点の国内集約や共通シャーシの採用で日米欧に新製品を同時投入できる体制を構築。収益性を改善し、2006年度下期の黒字転換を目指す(関連記事参照)

 同事業全体でも選択と集中を徹底し、現行分野ではテレビ、ビデオカメラ・デジタルスチルカメラ、ビデオレコーダー、携帯オーディオを重点カテゴリーに位置付ける。

 一方、不採算の15分野について撤退や縮小などのリストラを決定。具体的分野については「適宜発表していく」(中鉢社長)として明かさなかったが、ロボットは「研究開発を縮小」、QUALIAは「ビジネスは継続するが、新規はストップ」と述べた。

photo 成長戦略の重点目標

 将来の成長分野への種まきは積極的に行う。テレビやカメラ、コンテンツのHD化を推進するほか、次世代ディスプレイとして有機ELの開発を強化し、新設する開発本部は中鉢社長自ら陣頭指揮を執る。Cellプロセッサ関連技術・商品開発をする専任組織をCEO直属で設け、家庭用・モバイル用には高性能な汎用LSI開発も行う。

 これまで半導体投資はゲーム分野を中心に3年で5000億円を投じてきたが、さらに2007年度までに3400億円を投資。イメージセンサーなどのデバイスを強化する。

カンパニー制廃止、横断的な組織に

 「カンパニー制とEVA連動評価が結果的に短期志向と部分最適に陥った」(中鉢社長)という反省に基づき、ソニーが導入の先駆けとなったカンパニー制の廃止にも踏み切る。コンシューマーエレクトロニクス部門の現行8カンパニー3事業組織体制を、テレビ、ビデオ、オーディオ、デジタルイメージングの4事業本部とVAIO事業部門に再編。各事業本部・部門間で商品戦略や技術、マーケティングなどの横断的連携を強化するマトリックス的な組織を構築する。

photo エレクトロニクス新事業体制

 コスト削減目標の2000億円は、減価償却費を除く固定費の15%に当たる。内訳は、不採算事業の整理と製品モデル数の20%削減、66の製造拠点を55に統廃合など、事業の絞り込みによるものが1300億円。カンパニー制廃止などによる間接部門の効率化などが700億円。1万人の人員削減も断行し、日本で4000人、海外で6000人を予定している。コスト削減策は2006年度末までに8割を実行する計画だ。

 構造改革費用として2100億円を計上する。本年度はCRT製造設備と建屋の減損処理、早期退職など1400億円、2006年度は製造拠点の統廃合、早期退職の継続などで700億円とした。

 エレクトロニクス事業は2006年度に黒字転換を見込む。連結営業利益率の目標は5%に設定したが、同事業については4%とした。

 不要な土地や非戦略的な投資有価証券など1200億円相当を売却し、資産圧縮も進める。金融持株会社の売却が一部で伝えられたが、株式公開を2007年度以降に延期するものの売却は改めて否定した。コンテンツ配信などの相乗効果が見込めるスカイパーフェクト・コミュニケーションズの売却も否定。「So-net」を運営するソニーコミュニケーションネットワークは計画通り、本年度内の株式公開を目指す。

 本年度の構造改革費用を520億円積み増したため、同日、2005年3月期連結業績予想を下方修正した。営業損益は200億円の損失(7月予想時は300億円の黒字)とし、最終損益は100億円の赤字(同100億円の黒字)となる見通しだ。

「世界のソニー復活へ」

photo 「私たちの時代に『世界のソニー』を復活させたい」と話す中鉢社長

 「事業環境が地殻変動を起こしている。この変化に先駆けて差別化された新製品を投入し、ソニーブランドを守るのが使命だ」──ハワード・ストリンガー会長は都内で開いた記者会見でこう話し、「エレクトロニクスの再生が最重要。これなくして目標は達成できない」と中期経営方針について説明した。

 ここ5年にわたってソニーのエレクトロニクス事業は伸び悩み、ついに営業赤字に転落という屈辱を味わった。中鉢社長は不振の原因を、(1)顧客の視点を忘れたことによるヒット商品の不在、(2)技術力の相対的な低下、(3)縦割りによるオペレーション力の低下──にあったと説明。経営方針に盛り込んだカンパニー制の廃止は、ストリンガー会長が訴え続けてきた「ソニーユナイテッド」を実現するには不可避だった。

 同社によると、北米で先行投入したBRAVIAブランドの液晶テレビが、9月第2週でシェアトップを獲得。中鉢社長は「確実な復活の手応え感じている」と話す。営業利益率目標の5%は、かつて出井伸之前会長が掲げた10%からは後退したが、中鉢社長は「感触としては十分達成可能だと思う」とした。

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