「BOSS」と言えば、少しでもギターをカジったことがある人ならまずご存じだろう。ギター用エフェクターとしては、プロ・アマ問わず、国内外で高い評価を得ているブランドだ。会社としては、ボス株式会社。楽器メーカーとして知られるローランドの100%子会社である。
BOSSブランド初のエフェクターは「CE-1」という大型のコーラスアンサンブルで、これも非常に評価が高いのだが、BOSSの名を一躍世界にとどろかせたのはなんと言ってもコンパクトエフェクターシリーズである。最初のコンパクトエフェクターが「OD-1」というオーバードライブで、真空管ギターアンプを歪ませたようなマイルドな音が出るというものだ。
これが発売されたのが、1977年。当時中学生のギター小僧であった筆者も、もちろん買った。当時BOSSのOD-1は、エレキギターを買った次にデフォルトで買うものであったのだ。以降BOSSのコンパクトエフェクターは、多少の改良を加えながらもかたくなに同じ形状、同じサイズで綿々と生産され続けている。
そもそも歪みを表現として使った楽器というのは、エレキギターが最初であろう。初期の歪みとは、どのようなものだったのだろうか。BOSSでギターアンプの開発リーダーを務める高田剛右(たかた こうすけ)氏は、こんな話をしてくれた。
「ギターがオーケストラの中に入ったときに、音量が小さいのでギターアンプを使いますよね。ですがそれでも音量が足りないので、どんどんボリュームを上げていく。本来は歪まない程度で使うのが望ましいわけですが、そこを超えて歪んだぐらいが、もっとも音量が大きいわけです。そういう状態で使っているうちに、それがロックの世界でちょっとずつ定着していった、というのがルーツだと聴いたことがあります」(高田氏)
ロックンロールの神様といわれたチャック・ベリーの「ロール・オーバー・ベートーベン」が出たのが1956年だから、すでにその頃からアンプを使って音を歪ませるという試みが行なわれてきたと考えられる。そもそもエレクトリックギターが誕生したのが、1936年のGibson ES-150、ES-250とされているわけだから、年代的にもそんなところだろう。
「当初ギターアンプにはボリュームしかなかったわけですが、音を歪ませるという目標ができたことで設計も変わっていきました。1960年代後半ぐらいから、プリアンプ段の増幅をコントロールするGAIN、パワーアンプ段の増幅をコントロールするVolumeという2段コントロールになっていくわけです」(高田氏)
それまで音を歪ませるには、デカい音を出すしかなかったわけだが、いつもデカい音では音楽全体のバランスを壊してしまう。そこで音量はそこそこでも音が歪む工夫として、プリアンプで音を大きくしてパワーアンプに入力するという仕組みが生まれたのである。
この仕組みを、ギターアンプそのものを使わずにできないかというところから、エフェクターの歴史はスタートした。BOSSでマルチエフェクターを始めとするエフェクターの開発リーダーである高橋政雄氏は、こう語る。
「おそらく歪み系のエフェクターとしては、60年代のファズ(Fazz)が最初でしょう。ただ当時のファズは、今の感覚ではかなりチープな音で、ギターアンプを歪ませたものとは全然違っていたと言います」(高橋氏)
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