それもいろんな層にアピールしようと中途半端なコンテンツを浅く広く用意するんじゃなくて(これは結構ありがちなパターン)、「ミュージックビデオクリップ」というジャンルに絞って大量にコンテンツを用意した。音楽ファンなら好きなアーティストのビデオクリップをダウンロードして手元に持ちたいもの。そういう心理をしっかりついている。
日本でもすでにミュージックビデオクリップとPixar社の短編アニメーションのダウンロードが可能だ(1本につき300円という価格はちょっと微妙だが)。
ダウンロードしたコンテンツは(320×240ピクセルではあるけど)iTunes上で再生できるわけで、iPodを持ってなくても、iTunesがあれば楽しめるのだ。新型iPodは買わないけど、ビデオクリップは自分のパソコンで楽しむって人も大勢出てくるだろう。
世間では「iPodが動画対応した」って捉えられがちだけど、本当にすごいのはiTunes(というか、iTMS)の方だったのである。
システムをいったん作ってしまえば、あとはなんとでもなる。それが普及して、売れるということになれば、映像コンテンツを提供する会社も出てくるだろう。
そうすればまたひとつ変化が起きるのだ。
個人的には「ビデオポッドキャスト」が面白い存在になると思う。ちょっとした映像を配信する手段としては非常に優れているからだ。これで自分が作った映像を配信してみたいと考える人は結構いるはず。
映像コンテンツをiPod用に変換するのも簡単だ。QuickTime Proの「書き出し」機能に「ビデオからiPodへ」というメニューが追加されたからだ。それを実行するだけでいい。
iPodの話も、しておこう。
iPodで重要なのは、iPodのラインアップに「動画再生機能を搭載したちょっと高めの上位モデル」を用意したわけじゃないということ。iPodをモデルチェンジしたついでに動画再生機能がついたのだ。今からiPodを買えばもれなく動画再生に対応しているのである。
従来の20Gバイトと60Gバイトモデルをフルモデルチェンジして30Gバイトと60Gバイトにし、液晶モニターをQVGAの2.5型にでかくしたと同時に、大きさはそのままでより薄くより軽くし「ついでに」動画再生機能をつけたと考えるのが一番いい。
写真の時は、まずiPod photoがiPodとは別のモデルとして登場してから統合されていったが、動画再生はいきなり統合されての登場なのである。よいことだ。
ただアップルコンピュータらしい?のは、薄型軽量を優先して、従来のiPodが持っていた機能を2つ捨てちゃったこと。なんとリモコン端子とFireWire(IEEE1394)によるデータ転送機能がなくなってしまった。普通はそういうことしないと思うのだけど、アップルコンピュータのよいところというか悪いところというか。
Macユーザー的にはFireWire未対応は納得しがたいところではある。旧型iPodを使ってたユーザーがそのままFireWireを使えるように、FireWire対応のドックを用意するくらいのことはして欲しいんだけど、難しいか。どっか作ってくれないか。
でも今回のiPodとiTunes6とiTMSの同時動画対応は非常にポイントが高い。誰でもわかりやすく楽しめるし、今後の展開にも期待できる第一歩だ。動画対応iPodを買うか否かにかかわらず、iTunesを6.0にアップデートしてビデオクリップをダウンロードして楽しみたいって人はかなりいるに違いない。
あとは日本版iTMSの楽曲と、日本人アーティストのビデオクリップもがんばって充実させていってねってとこか。
荻窪圭――――
フリーライター兼主夫。1986年頃からこの業界であれこれ書いているのでずいぶんと老舗になりました。いつの間にかデジカメとMacの人です。まだどちらも面白いので当分この路線で遊びそう。作例を撮りに行くという大義名分を胸に、デジカメ抱えて自転車で走り回るのが趣味と実益です。
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