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ビデオiPodの登場で変わる「何か」小寺信良(1/4 ページ)

» 2005年10月17日 10時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 先週末のネットニュースメディアは、ビデオiPodの話題一色に塗りつぶされた。以前から出るのではないかと予想されてきた製品であっただけに、好意的に受け止められたようだ。

 さて、週が開けて少し落ち着いたところで、このビデオiPod(ネーミング的にはただのiPodなのだが、ここでは暫定的にそう呼ぶ)を中心とした一連のビジネスが、今後日本においてどのような影響を及ぼすのかを考えてみよう。

 イヤその前に、ちょっとイジワルな指摘をしておこうか。丁度1年前、AppleがiPod Photoを発表したときに、かのスティーブ・ジョブス氏は「携帯プレーヤーの進む方向として、動画対応は間違いだ」と述べている。

 だがそのとき筆者は別メディアのコラムで、これはiPodの動画対応製品を出しやすくするためのブラフだと分析した。ITmediaのコラムで書いておけば自慢げにリンクが張れたものを、まったく惜しいことをした。

年末セールスへ向けたタイミング

 ビデオ対応の新しいiPodは、次週から発売ということで、ホリデーシーズンには十分間に合うとジョブス氏はアピールしていた。アメリカのホリデーシーズンというのは、10月の末からポツポツと宗教的な行事(ハロウィーンとか)が始まり、11月の第4週木曜日の感謝祭から日曜日までの4連休で、本格的にスタートする。

 感謝祭の翌日金曜日は、俗にブラックフライデーと呼ばれている。これは何もブラックサバス的に悪い意味ではなく、多くの店でたくさんの商品が売れて黒字になることから、こう呼ばれているそうである。そこからクリスマス商戦までで、アメリカの経済を左右するほどの大量消費が行なわれるわけであるから、ギフト向け商品として喜ばれるであろう新型iPodがこれに間に合うかどうかは、非常に重要なわけである。

 一方、日本でこれから大量消費が行なわれるのは、冬のボーナス時期から年末・年始にかけての期間に集中する。アメリカのホリデーシーズンと違ってスタートはバラバラだが、まあだいたい同じ時期がかき入れ時だ。

 発表してすぐに製品が並ぶというのは、消費行動にも大きな影響を与える。そしてその戦略の陰に泣く製品も出てくるわけで、11月19日発売のソニーのWalkman Aは、まず確実に息の根を止められた格好となるだろう。

 Walkman A最上位モデルが20Gバイトで、店頭予想価格は3万5000円前後。一方新iPodは、下位モデルでさえ30Gバイトで、アップルストア価格は3万4800円。もちろんWalkman Aには、映像や写真の表示機能などない。例え値段や容量を度外視しても、両製品を見比べて消費者がどちらを選ぶかは、言うまでもないだろう。

 さらに今回のiPodは、「ビデオが見られます」という機能が付いただけのものではない。それで見るものまで一緒に提供したことが大きいのである。ポータブルデバイス販売と映像配信サービスをシンクロさせるというアイデアは、今年1月に行なわれたソニーの業績説明会を受けたコラムの中で、筆者はソニーに対してメッセージを送ったつもりだった。

 筆者もソニーの復活を応援している一人なのであるが、人の話全然聞いてませんかそうですか。

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