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PCモニタの代替として気軽に使いたいハイコストパフォーマンスDLP機――BenQ「MP610」

» 2005年11月01日 00時00分 公開
[ITmedia]

 プロジェクターの用途といえば、ビジネスプレゼンテーションとホームシアターが中心だろう。しかし、今回紹介するBenQのDLPプロジェクター「MP610」は、そのどちらかにあっさりと振り分けてしまうのは、しっくりこないというか、惜しいというか、そんな印象を抱かせる魅力のある製品である。

photo 幅283×奥行き238×高さ94ミリ、質量は2.7キロと小型・軽量に仕上がっているBenQのDLPプロジェクター「MP610」。前面左のスリット部分から排気を行い、右側面から吸気する機構となっている

 このプロジェクターでは、S/コンポジット映像入力を装備するほか、別売のアダプターを接続すればコンポーネント映像の入力も可能だ。しかし、やはりアナログRGB(ミニD-sub15ピン)端子経由でPCと接続するのが、最も標準的な使い方となるだろう。つまり、製品ジャンル的には、データプロジェクターといっていい。

photo 左からリモコン用赤外線受光部、制御用RS232端子、同じくUSB端子、アナログRGB入力(コンポーネント兼用)、アナログRGBスルー出力、コンポジット映像入力、S映像入力、音声入力となる。音声入力端子の右下に見えているのは内蔵スピーカーだ

 しかも、本体サイズは幅283×奥行き238×高さ94ミリ、質量は2.7キロと小型・軽量であり、ソフトキャリングケースもアクセサリーとして標準付属。さらに、クイッククーリング機能を装備しており、使用後に冷却が完了するまでの待ち時間も約30秒へと短縮されているため、外出先でのプレゼンテーション用途などにも十分対応可能だ。

 ただし、搭載しているDLPのネイティブ解像度はSVGA(800×600)となる。もちろん、入力信号自体は1280×1024解像度まで対応しているので、SXGAやXGAでの表示も可能だが、ビジネスプレゼンテーション向け製品のほとんどがネイティブでXGAをサポートしていることを考えれば、多少心許ないと感じられるかもしれない。

 しかし、これにはきちんとした理由がある。実は「MP610」の最大の特徴は、8万円を切るという、きわめて手頃な価格にほかならない。この点を念頭に置けば、SVGAという解像度にも誰しも納得がいくに違いない。

 低価格とはいえ、実際に箱から取り出してみても、本体は決して安っぽくはなく、ピアノブラックを思わせる光沢ダークブルー仕上げの天板などは、むしろ愛着を感じさせるほどの質感が持たされている。そこへ配置されている操作ボタン類に関しても、見た目が洗練されているばかりでなく、クリック感がしっかりと伝わってきて、操作しやすい。

photo リモコンも標準付属するが、本体のボタンでも十分に操作可能だ。アプリケーションモードの切替やキーストン調整などはワンボタンで実行できるほか、MENUボタンを押せば、各種設定を行えるメニュー画面を呼び出せる

 また、低価格製品では「とりあえず映ります」といった内容の場合も多いが、この「MP610」は違う。もちろん、ズームやフォーカスは手動などと、基本機能に徹するつくりにはなっているが、必要な部分にはこだわりを注ぎ込んでいる。

 まず第一には、静音での動作を実現した。大型の冷却ファンを2セット搭載し、各々を低速で回転させることで、標準モードでも29デシベル、省電力モードに至っては25デシベル(いわゆる“ささやき”レベル)という低い動作音に抑えているのだ。もちろん、単に静かなだけではなく、光源ランプとDMDチップの各々には個別のファンが用意されるなど、冷却力には余裕が持たされている。そのため、設定メニューで「高地モード」をオンにすれば、気圧が低くて空気が流れにくくなる高地や、平均気温が高い場所にも、ある程度は対応可能な設計だ。

photo 設定メニューでは、カラー調整のほか、水平位置/垂直位置、パスワードの設定、高地モードや省電力モードのオン/オフなどが行える。表示は実に幅広い言語に対応しており、もちろん日本語も選べる

 また、肝心の出力性能も十分で、明るさは2000ルーメン、コントラスト比は2000:1と10万円以下のプロジェクターとしてはクラストップレベル。カラーホイールはイエローを追加した5ホイール構成で、彩度においては、黄色や黄緑の方向へもしっかりと伸びている。

PCと組み合わせて、気軽にエンターテイメントを楽しむ使い方が最適

 前述のような、製品特徴を複合的に組み合わせていくと、「MP610」の活用法が明確に見えてくる。低価格ながら、DLPならではの明るさだけでなく、静音性も兼ね備えたこの製品は、“PCモニタの代替として、カジュアルに使えるパーソナル・データプロジェクター”を目指してつくり出されたに違いない。

 ビジネス用途はもちろんのこと、自宅ではエンターテイメント用途にも使えるというわけだが、ただし、ほかの製品のスタンスのように、エンターテイメントとは、すなわちホームシアターを指すわけではない。要するに、「MP610」では、あくまでPCの持つエンターテイメント性を大画面に投影する使い方が正解のように思える。DVD観賞、録画したテレビ番組の再生、さらにはWebブラウズやゲームまで、いつもPC(+モニタ)で楽しんでいるものを、気軽にそのまま映し出せばいいのだ。

 実際に製品を試用してみて、この印象はさらに強くなった。おすすめの使い方は、ネイティブ解像度のSVGA表示、60型前後の画面サイズを選択、そして、部屋は明るいまま(さすがに昼間の日光下はつらいが)というスタイルだ。

 解像度に関しては、もちろん、XGAで利用してもいいが、可能なかぎりネイティブ解像度のSVGA表示を選択すべきだろう。800×600でもテレビやDVDの観賞、そして、ゲームではあまり問題は生じない。Webブラウズでは画面がやや狭く感じ、ある程度の工夫や慣れも必要だが、その分、文字が小さくなりすぎることもなく、読みやすいのもたしかだ。

 画質と迫力を天秤にかけ、さらに「気軽に使う」という点も考慮すると、画面サイズは60型前後が最適と感じる。設置環境によっては80型程度でも問題なく運用可能だが、60型画面であれば、投影距離は2メートル強ですみ、ユーザーはその1メートルほど後方から眺めればいい。この製品では側面から吸気を行い、前面から排気する機構のため、背面での熱上昇や光漏れがない。そのため、この視聴スタイルでも不快な思いをしなくてすむ。

photo フォーカス、および、ズームは手動で、レンズの上に装備された2つのリングを回して操作すればいい。ズーム比率は1.15:1なので、たとえば2メートルの投影距離であれば、52〜58型の間で画面サイズを調整できる

 100型以上ではさすがに少々粗さやボケも目立ってしまうが、60〜80型にとどめれば、表示も明瞭だ。しかも、やや明るい部屋でも十分に観賞可能な明度を確保できるため、部屋を暗くする必要もない。カラーホイールは2倍速動作なので、さすがにカラーブレーキングは若干見えてしまうものの、明るい部屋での運用であれば多少は軽減できるだろう。

 一般的な用途であれば、省電力モードはオンにするといい。1600ルーメンと、当然ながら標準モードよりも落ちるものの、それでも、視認性は十分な高さだ。さらに光源ランプの寿命についても、省電力モードなら4000時間とほとんど交換を心配せずにすむレベルとなる(標準モードでも3000時間)。

 カラー調整については、9種類のアプリケーションモードが用意されており、PC入力時は「最高輝度」「プレゼンテーション」「sRGB/フォト」「ゲーム」「ビデオ」から選択可能だ(ビデオ入力時は「ムービー」「シネマ」「ゲーム」「フォト」となる)。たとえば、PCの再生ソフトウェアでDVD観賞を行う場合には「ムービー」を選ぶという使い方となる。アプリケーションモードの切替は、本体やリモコンのMODEボタンを押せばいいだけだが、それでも面倒というなら、常に「sRGB/フォト」にしておき、各ソフトウェア側で調整を行うのもいいだろう。

 BenQの「MP610」は、ビジネス、あるいはエンターテイメント、いずれかの用途での高い性能・品質を求めるユーザーには適さないかもしれない。しかし、価格や設置環境など、さまざまな面でプロジェクターに敷居の高さを感じ、導入をあきらめてしまった人には、一見の価値がある。もはやプロジェクターは特別な存在でも、高嶺の花でもない。もっと気軽に利用を考えてもいい時期に差し掛かったといえるだろう。

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年11月30日