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コラム 小寺信良:
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あくまでも筆者はこう感じる、ということなので、根拠を求められてもそんなものありはしないのだが、ここはもっともらしく説明してみよう。
まず90年代に、いわゆる旧来のマニアと言われる層の行動が社会的に目立たなくなった。バブル経済の崩壊により、お金のかかる趣味に没頭する人が少なくなったということもあるだろうか。筆者の知るところでは、高級オーディオやホームシアターなどの趣味は、いったんこの時期に衰退している。マニア層を相手にしていた商売にとっては、まさに失われた10年である。
継続的に使われない言葉は、古くなる。00年代を迎えてまた趣味などを始める多少の余裕が生まれると、かつてのマニア層を総称する言葉が空白となる。どうもその部分に、「オタク」という言葉を多少ライトな感覚で当てはめていったのではないか。
00年代に入ってからの「オタク」は、以前であれば趣味人や通(つう)であることの、自嘲的なニュアンスとして成立しつつあるように感じる。例えば「隠れオタク」などという言葉があるが、リアルに80年代のオタク像を当てはめると、そもそも隠れることが可能な時点でオタクではない。かつてのオタクが意味した層は、普段からの見た目や言動に社会的な適合性を持たないため、隠れる、すなわち一見通常の社会人と同等であるように見せかけることができなかったのである。
「オタク」という言葉が指し示す層が下へずれてくると、かつての「オタク」を指す部分が空白となる。そこに入るべき言葉をいろいろと考えたが、感覚的に近いのは「キモオタ」だろうか。
その発祥時においては、「キモオタ」の指し示す範囲は狭く、アイドルや声優の過激なファンを指す言葉とされていた。それが次第に字面から解釈拡大が進み、かつてのオタクのポジションに収まりつつある。
ただこの言葉が、これまでのオタクに類する言葉と決定的に違うのは、自称する言葉ではないというところである。むろんかつての「オタク」という言葉も、発祥当初は自称する言葉ではなかった。一般人から見て理解できない趣味の傾向に名前を付けることで、概念化したに過ぎない。
オタクという言葉が延命した理由は先ほども述べたが、もう1つ、自称する言葉として用いられたから、という要因は考えられないだろうか。すなわち一連の社会事件を通して、被差別を受け入れるというムーブメントがあった、ということである。そうして自称が可能な言葉であるがゆえに、レベルを下げて普通名詞化することも可能だったのではないか。
この状態は、かつての「ビョーキ」が自嘲的な響きを持ちながらも、その中に多少の選民的な要素も含まれていた感じに近い。
次ページ「なにがキモいのか」[小寺信良,ITmedia]
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