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悩みは尽きぬバーチャルサラウンドの世界小寺信良(1/3 ページ)

» 2005年11月28日 12時20分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 バーチャルな世界も、いろいろと幅が広い。音声、映像だけでなく、最近は触覚などもだんだんモノになりつつあるようだ。ただ、何をもってバーチャルというかは、いろいろ定義があるだろう。

 例えば単に映画作品も、フィクションであるがゆえに仮想現実、すなわちバーチャルリアリティだという解釈もできる。あるいは2chステレオであっても、スピーカーが左右にしかないのに音が真ん中に定位することすらも、バーチャルと言って言えないこともない。

 だが最近のバーチャルリアリティはもう一歩深まって、そこにないのにあたかも存在するような段階にまで進みつつある。映像にしても音場にしても、脳を騙して立体として認知させる技術、筆者はそういうものが大好きなのだ。もしバーチャルリアリティ抱き枕があったら、毎晩「バーチャルたんハァハァ……」と抱いて寝たいぐらいである。ああそうか、キャラの抱き枕とは、そう機能するのか。

 サラウンドが今のように当たり前になる以前に、仮想音場というものを強烈に意識させてくれた製品があった。ソニー“バーチャルホン”「VIP-1000」というヘッドフォンである。年数ははっきり記憶していないが、おそらく10年ほど前だったろう。

 これはどういう製品だったかというと、ヘッドフォン内部にジャイロセンサーが備わっており、頭を左右に振ると、それに合わせて音場を制御するというものだ。

 んーわかりにくいか。もう少し説明すると、例えばテレビの音を、テレビのスピーカーで聴いているとする。そのまま首を左に振れば、画面ともども音源は頭の正面に対して右に位置を変える。この効果を、ヘッドフォンでやってしまうのである。

 普通音楽を聴く場合は、頭がどの位置でも音像はセンターにあるべきであろうから、この製品はオーディオ用というよりも、AV向きだったのだろう。もちろん量が出るようなものではなかったから、ものすごく高かった。おそらく10万円以上しただろう。ある意味この製品が、筆者のバーチャル魂に火を付けたと言ってもいい。

 そしてこのヘッドフォンの成果は5.1ch世代に引き継がれ、1998年に「MDR-DS5000」というサラウンドのヘッドフォンに至る。以降MDR-DSシリーズは今日に至るまで、マイナーチェンジしながら販売され続けている。

独自技術、「S-Force」の系譜

 DVDビデオの登場以来、サラウンドという言葉は飛躍的に認知度が高まった。だがそもそもスピーカーを自分の回りにいっぱい置くんだったら、脳を騙すというよりホントにそっちから音を出すだけであり、それってバーチャルって言わなくね? と思ってしまう。やはり2つ3つ程度のスピーカーで立体音場を形成することこそ、バーチャルリアリティの神髄ではなかろうかという気がする。

 筆者は過去バーチャルサラウンド製品が出るたびに試してはいるのだが、悲しいことに筆者には、今ひとつサラウンドに聞こえない。いや、騙されまいと抵抗しているわけではなく、筆者としてはむしろ騙されたいのである。そう思って一生懸命サラウンドをイメージするのだが、どうしても「これ逆相なだけじゃん」で終わってしまってしまう。

 だがここ2年ぐらいの間で、バーチャルサラウンド製品は、飛躍的に良くなってきていると感じている。「バーチャル音痴」の筆者でさえも、徐々に立体に聞こえるものが出てきている。

 今年10月、ソニーからヘッドフォンではなくスピーカーを使ったバーチャルサラウンド製品、「DAV-X1」がリリースされた。この製品に搭載されている「S-Force PRO フロントサラウンド」は、ソニー独自のバーチャルサラウンド技術であるという。

photo 独自サラウンド技術を搭載した「DAV-X1」
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