デジカメの撮像素子はまだまだ高画素化が進んでいる。一眼レフ機でもコンパクト機でも、今や800万画素クラスは珍しくない。最近あるメーカーの技術者から聞いた話だが、ハイエンドの一眼レフ機では、すでに2000万画素オーバーも射程圏内だという。
そんな技術競争は別として、実際のユーザーの立場では、どのくらいの画素数が必要か。個人的には、ちょうど今使っている800万画素クラスのカメラで十分という気がしていた。A4よりも大きく印刷することは仕事でもプライベートでも稀だし、ファイル容量の面でも800万画素程度が手ごろで扱いやすいからだ。
だが今回、1280万画素のキヤノン「EOS 5D」を使ってみたら、もうだめだ。高画素はいらない、という気持ちが揺らいできた。EOS 5Dの精細な描写は、たとえA4の印刷でも800万画素クラスより格上だとすぐに分かる。しかも、従来の1000万画素オーバーのモデル「EOS-1Ds」シリーズよりも大幅に安く、楽勝とはいわないが、多少の無理をすれば手の届く価格帯である。
たちまち物欲がわき上がり、買い替えを検討している自分がいた。メーカーの思うツボである。しかし物欲の本当の理由は、高画素に惹かれたからではない。35ミリのフルサイズセンサーによって、ボケ味のある写真が撮れること。これこそ、高画素である以上にEOS 5Dの最大のポイントだと思う。
絞りを絞り込み、1280万画素の利点がフルに発揮されたシャープな写真を撮るのもいい。だが今回のレビューでは、シャープネスよりもボケ味に、解像感よりも立体感や空気感にスポットを当て、フルサイズ機EOS 5Dの魅力を探ってみたい。
ボタンなどの配置や操作系はEOS 20Dを継承。液晶は2.5型の大画面。屋外での視認性には課題が残るが、大型化によって表示は見やすくなった
EOS 5Dのボケの美しさとは何か。同じ画角と絞り値で比較した場合、APS-Cサイズの撮像素子を搭載したほかのデジタル一眼レフ機よりも、ピントが合った前後のボケ量は明らかに大きい。撮り比べるまでもなく、APS-Cサイズのデジタル一眼レフ機のユーザーなら、EOS 5Dを使えばすぐに体感できると思う。
このボケの理由を簡単に説明すると、APS-Cのサイズの撮像素子は、35ミリフィルムに比べて撮像素子の面積が小さいため、写る範囲(画角)が同じ場合には、焦点距離は短くなる。焦点距離が短いほど被写界深度が深くなり、フィルムよりもボケる度合いは少なくなる。一方、フルサイズの撮像素子は、面積が35ミリフィルムとほぼ同等なので、フィルムと同じくらいボケる。つまりAPS-Cサイズのデジタル一眼レフ機よりもボケ量が大きい、というわけだ。
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