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「VODで手軽な映画観賞を追求したい」――シネマナウインタビュー(1/2 ページ)

» 2005年12月12日 01時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 PC向けに映画コンテンツのビデオオンデマンド(VOD)サービスを手がけるシネマナウ。同社の米国法人、CinemaNowは1999年にサービスを開始したこの分野における先駆け的存在で、現在は20th Century FoxやUniversalなど大手を含む200社以上と提携し、映画を中心にした7000本以上のコンテンツを提供している。

photo シネマナウ

 日本法人は2005年1月に設立され、同年4月にサービスを開始したが、いわゆる大作といわれるハリウッドメジャーの作品はなかなかラインアップに加わらず、ようやく12月にワーナー・ブラザースとのライセンス契約が締結されたばかりだ。

 同社のコンテンツ提供方法は視聴期限付きのダウンロード型(サブスクリプション型)。ダウンロードしたファイルをいつでも視聴可能なため、ストリーミング型と異なり、好きなタイミングでの試聴が可能だ。

 最近ではUSENのISP不問の無料ストリーミング放送「Gyao」が登録者を200万人以上に伸ばす(関連記事)など、PCで放送(番組)を見るというスタイルも脚光を浴びているが、有料サービスは一部のアダルト専門サービスを除くとまだまだ収支のバランスを取るのに腐心しているのが現状だ。

 ハリウッドメジャー作品という有望コンテンツの提供を開始した同社の現状と、今後の見通しについて同社の野中昌道氏(マーケティング部 ディレクター)に話を聞いた。

photo シネマナウ マーケティング部ディレクターの野中昌道氏

「将来的にはセルDVDと同じタイミングでダウンロード提供を」

――PC向けの動画配信サービス自体は以前から存在していますが、Gyaoは「ISPフリー」「全番組無料」というアプローチを用いる事で多くの会員を獲得する事に成功しました。その成功をどうとらえていますか?

野中氏: Gyaoもシネマナウと同じく視聴にPCが必要ですが、テレビ型といえるサービスですね。それはそれでメリットがありますが、ダウンロード型にはダウンロード型ならではのメリットもあると思います。わたしたちとしては、映画コンテンツに特化するという独自のスタンスでサービスを展開していきたいと考えています。

――Gyaoが受け入れられたのは、テレビに比べてどうしても面倒な“PCで番組を視聴する”という形態を、“ながら見”というスタイルを提供する事でカバーした事が大きいと思います。ただし映画の場合はテレビよりも、より画面に入り込むことが必要になりますが、“PCで映画を見る”という形態は受け入れられるのでしょうか。

野中氏: 高速インターネットや無線LANの普及もあり、テレビを見るという行為とネットを見るという行為は共存するようになっています。リビングでテレビを見ながら、関連する情報をネットで検索する人も多いでしょう。昔ほどPCで映像を見る事に抵抗を感じる人は多くないと思います。

 現在はまだPCベースでのサービス展開ですが、PC的な機能を内蔵したテレビやテレビ機能を内蔵したPCも多く登場しており、ネットワークメディアプレーヤーのような両社の中間に位置するデバイスも登場しています。将来的にはPCでダウンロードした映画を、リビングのテレビで見るというスタイルを提供したいと思います。

――今回はワーナーとの提携が発表され、「バットマン」や「オーシャンズ12」、「コンスタンティン」「逃亡者」などの配信が開始されました。そのほかのメジャーや国内配給元のコンテンツについてはどのような状態でしょうか

野中氏: そのほかのハリウッドメジャーについてはもちろん、国内配給元とも規模を問わずに交渉を行っています。ハリウッド作品にこだわるつもりはなく、邦画や韓国をはじめとしたアジア圏の作品についても積極的に配信していきたいと考えています。

 映画というコンテンツは劇場公開→パッケージ販売→有料チャンネル放送→地上波テレビ放映という順番でリユースされていきます。ネット販売はまだテレビ放送の後のタイミングになっていますが、将来的にはパッケージと同じタイミングで販売され、なおかつ少しだけ安価に提供できるような形になればいいですね。

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