Blu-ray DiscやHD DVDといった次世代DVDをはじめ、PSPや第5世代iPod、携帯電話、ワンセグ放送など携帯機器向けにも利用されている動画コーデックがH.264だ。PC用ソフトウェアとしては、アップルの「QuickTime」やソニーの「Image Converter 2 Plus」などが対応しており、なかでもアップルはQuickTimeの開発元という事もあり、H.264に強くコミットしている。
米Apple ComputerでQuicktime技術部門の責任者を務めるフランク・カサノヴァ II氏(インタラクティブ・メディア・グループ、プロダクトマーケティング、シニア・ディレクター)にH.264の持つ可能性について話を聞いた。
――まずはQuickTimeとH.264の関係について聞かせてください。
カサノヴァ II氏:QuickTimeは1991年に登場しましたが、2000年前後からオープンスタンダードの技術へ強くフォーカスするようになっています。2005年5月に提供開始されたQuickTimeの最新版(バージョン7)がH.264をサポートしているのもそういった流れの一環です。
H.264はQuickTime以外にも、ビデオ編集ソフト(iMovie)やビデオチャットソフト(iChat)などで利用されています。それにオープンスタンダードの技術ですから、多くの企業がH.264を利用しており、わたしたちもそれらと共同でH.264へ取り組んでいます。もっとも、AppleはPower Mac G5やFinal Cut Proといったソリューションを持っていますので、非常によいポジションにいると思いますけれどね(笑)。
――H.264はMPEG-2に比べ、圧縮効率に優れているのが最大のメリットであると言われています。自身では何がH.264の最大のメリットだと考えますか?
カサノヴァ II氏:まさにその通りです。MPEG-2コーデックを使用するDVDビデオ(容量は4.7Gバイト)では2時間の映画を収めようと思うと6〜10Mbps程度のSDクオリティが精一杯です。しかし、H.264を利用すれば、同程度の容量でも解像度をHDに向上させることができます。
また、(圧縮率が非常に高いので)iPodなどストレージ容量が限られている携帯機器でも高精細な映像を楽しむ事が可能になります。PCや光ディスクメディアはもちろんのこと、セットトップボックスやPSP、iPod、携帯電話まで幅広く活用できる事もH.264のメリットといえるでしょう。QuickTime7 Proでは、非常に簡単な操作でH.264を利用したiPod用ビデオを作成できるのも重要なポイントですね。
――QuickTime7 ProでH.264を利用したiPod用ビデオコンテンツを作成しようとすると、非常にプロセッサパワーを必要とします(関連記事「新iPodの動画対応機能を試す」)。これはなぜでしょうか? 早急に解決される問題なのでしょうか?
カサノヴァ II氏:H.264は新しい技術であって、開発が完全に行き届いた状態ではない事は確かです。MPEG-2が登場したときも、リアルタイムエンコーディングが可能になるまでは時間がかかった事を思い出してください。また、プロセッサのパワーは日進月歩で向上しています。技術の熟成とプロセッサパワーの向上、この2つが問題を解決してくれるでしょう。
現在はまだ課題があることは私たちも認識しています。しかし、Blu-ray DiscやHD DVD、PSP、デジタル放送(注:日本ではワンセグ放送がコーデックにH.264を採用している)などに使われる事が決まっており、多くの企業がH.264にコミットしています。次世代の映像コーデックがH.264であることは衆目の一致するところでしょう。
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