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各社展示のデモ映像に見る次世代光ディスクの潜在力2006 International CES

» 2006年01月10日 13時20分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 「2006 International CES」の展示会場で興味深かったのが、各社デモ映像のクオリティだ。ハイビジョン放送を体験して間もない頃は、多くの視聴者が“キレイ”と思ってくれるだろうが、実際にはMPEG2の圧縮歪みは決して小さなものではない。特にビットレートの低い地上デジタル放送は、大画面テレビで見るとノイズや歪みが遠目にもわかるほどだ。

 要は“慣れ”だ。高解像度の映像に対する驚きが隠しているデジタル圧縮の問題が、高解像度が当たり前になるにつれて、ハッキリと認識できるようになってくる。それも放送だけであれば、将来はノイズリダクション技術を用いることでカバーできるだろうが、ユーザー自身がお金を支払って購入するパッケージメディアともなれば、映像の品質に期待を持つのは当然。圧倒的に美しくなければ、新規格によるパッケージソフト不要論も出てくるかもしれない。ところが、年に1度のCESという場でありながら、各社がデモで使用している映像には誰もが気付く程の大きな差が存在していた。

 たとえばSamsung ElectronicsLG Electronicsといった韓国メーカーは、巨大なディスプレイを大量展示し、そこかしこで大画面フルHDをアピールしているが、そこに流れている映像はブロックノイズ、モスキートノイズが目立ち、デモ効果を狙ってか白ピークを伸ばしすぎ、色も彩度をグンと伸ばしたものだった。デモ効果を狙った絵作りはともかく、圧縮歪みの多さは100インチクラスの巨大プラズマディスプレイでは見るに耐えない。

photo LG Electronicsは102型プラズマディスプレイでフルHDの映像をアピール

 逆に、今年の会場内でもっとも良い映像を出していたのは松下電器産業のブースだ。松下電器ブース全体およびBDAブース内の松下製プレーヤーのデモで使われていた映像だけが、飛び抜けていい。話を聞くと、H.264 High Profileを用いて圧縮したハイビットレートの映像とのことだが、圧縮はパナソニックハリウッド研究所が担当していた。

 その画質は、MPEG-2にあるようなエッジ部分のチリチリとしたノイズ感がなく、なめらかな質感表現と細かい凹凸を再現する立体感を併せ持つ。圧縮による弊害は103インチのプラズマディスプレイを間近で見ても気付かない程だ。パナソニックハリウッド研究所の圧縮は16Mbps、12Mbps、8Mbpsのものを見たことがあるが、16Mbps程度ならほとんど歪み感がなく、12Mbpsでも比較しなければ違いがわかりにくい程度の低歪み、低ノイズ。このレベルの圧縮が行えれば、次世代のパッケージメディアにふさわしい品質といえる。

 これに対してソニーはBDのデモ映像をMPEG-2で見せた。関係者によると、どうやらソニーピクチャーズが発売する初期のBDタイトルにはMPEG-2を用いるようだ。デモ映像は40Mbpsという高ビットレートで圧縮されたものだったが、松下ブースで流れていたものに比べると暗部のノイズ感やエッジ部分のざわつきを感じる。同映像はBDアソシエーションブースでも使われていた。

photo BDのパッケージ

 実際にパッケージメディアにする際は、(2層がリーズナブルになる将来はともかく)より低いビットレートでオーサリングを行うことになる。果たして十分な品質がキープできるのか、若干ながら疑問が残る。今週、追加で行う映画スタジオへの取材で、画質に対するスタンスを訊いてみる必要がありそうだ。

 これに対してHD DVDの東芝は、H.264(プロファイル、ビットレートは確認したものの不明)でデモ。ノイズ感の少ないクリアな映像だが、ディテールがやや浅くなりエッジも甘め。この印象は2年ほど前に行われたデモでも同じだったことから、東芝のエンコーダあるいはオーサリング担当者の好みなのかもしれない。

photo HD DVDのパッケージ

 いずれにしろ、松下電器のデモ映像を見る限り、丁寧に圧縮された次世代光ディスクの映像のポテンシャルは相当に高そうだ。しかし、次世代光ディスクといっても、エンコードが悪ければ良い画質も得られない。

 今回はただのデモンストレーションだが、実際に販売が開始されれば、初期に出荷されたソフトの画質で、その新メディアのポテンシャルを評価されてしまう可能性もある。HD DVD対BDという構図はさておき、「次世代のHD映像を収めたパッケージソフト」が、あまりキレイじゃないなんて話にならないよう、可能な限りポテンシャルを発揮できる環境を、両陣営ともきちんと整えなければならない。

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