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「BRAVIA」で勢いづくソニー、その“巻き返し”戦略を聞くインタビュー(1/3 ページ)

» 2006年01月23日 11時28分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 このところ、苦境ばかりが伝えられるソニー。しかし、世界最大の北米市場を預かるSony Electronicsの小宮山英樹社長は強気だ。額面を見る限りは厳しいと見られるディスプレイ事業も、米国における「BRAVIA」ブランドの成功を例に挙げ、パーソナルオーディオ分野での巻き返しも誓った。

photo ソニーの米国法人、Sony Electronicsの小宮山英樹社長

 かつてはドル箱だったディスプレイ事業。しかし日本におけるテレビ事業の不振にくわえ、2005年は欧州でもCRT(ブラウン管)からフラットパネルへの移行が急速に進行。いまだ大きな利益を上げていた欧州のトリニトロン管テレビはほとんど売れなくなっていた。

 くわえて、北米では松下電器産業の攻勢もあって大型プラズマテレビが躍進、そのあおりを受けてリアプロジェクションテレビの平均販売価格が下がり続け、リアプロでシェアナンバーワンのソニーがもっとも大きな影響を受けたという。

 このように世界主要3市場で並行した不調により、気が遠くなるような赤字を出すのではないか。昨年末、経済誌の記者と話をしていると、どうも暗い話しか聞こえてこなかった。

 しかし、細かな収支に関しては言及しなかったが、BRAVIAブランドの立ち上げ成功をプラス材料としながら、小宮山氏はポジティブに話した。

 「BRAVIAは北米への投入1カ月で、短期的には30%ものシェアをフラットパネルテレビ市場でとった。リアプロ市場でも50%以上のシェアを獲得し続けており、いまだ大きな存在感がある。確かに、以前は利益を稼ぎ出していたトリニトロンが“宝”から“負債”へと変化してきており、どのように処理(工場閉鎖など)を行うかが課題になっているが、北米市場ではトリニトロンで得たブランド力をリアプロやBRAVIAのブランド力へと繋ぐ道筋ができつつある」(小宮山氏)。

 たとえば昨年、欧州では大規模なトリニトロンの工場を閉鎖し、それに伴う出費が事業収益を圧迫したというが、小宮山氏は「いろいろ処理が進んでいる証拠。出荷数が減ってきたCRTに関しては、生産拠点やアセンブル・配送拠点を集約することで効率化を図っている」と、計画的に改革を進めている最中であることを示した。

 単価下落が進んだリアプロジェクションテレビに関しても、透過型液晶パネルを利用する製品とは別クラスの製品としてSXRD(反射型液晶パネル)を位置付け「SXRDはたいへんに好調。ハイエンドの価格設定にもかかわらず数量的にはかなり出ている。確かに、昨年9月は松下のプラズマテレビが値下げとなった影響で価格下げ圧力が強かったものの、低価格のリアプロからSXRDへの移行が成功したため、平均単価の下落は問題のないレベルに食い止められた。生産コストに関しても順調に下がっている」と、“問題ナシ”を印象付けた。

 「正直にいえば、昨年秋は非常に苦しかった。しかし、BRAVIAブランドの成功をきっかけに、現在は状況が改善されてきたと実感している」と、平穏無事だったわけでもないことを匂わせる。が、一昨年の北米拠点移転や各事業所の統合など組織のスリム化も進んでおり、2年で20の工場や事業所統合を実施。倉庫も5カ所から3カ所へと減らすといった経費節減の効果が徐々に現れてきている。

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