2006年年頭に行われたMac World ExpoはIntelプロセッサ搭載製品の話題がメインで、iPodに関する話題はiTunes Music Storeの状況報告や車載ソリューションの拡大など、これまでに触れられてきたテーマの延長線にしかすぎなかった。
筆者もジョブズ氏の基調講演に参加したクチだが、実は開催前、まことしやかに流れていたiPodに関するウワサが2つあった。
1つはBluetoothへの対応である。
iPodは初代から数えること5代目となっているが、動画再生機能を搭載した今となっても、携帯音楽プレーヤーであることを製品のアイデンティティとして掲げている。iPod nanoの発表時に来日した、米Appleのグレッグ・ジョズウィアック氏(iPod プロダクツ ワールドワイド プロダクト マーケティング担当副社長)も「ミュージックプレーヤーとしてのスタンスは変わらない」と明言している。
より快適なリスニングのため、iPodは容量の増加、本体の小型/軽量化、液晶のカラー化、低価格化などさまざまな方向へ進化を続けてきた。次なるリスニングの快適化として体にまとわりつくヘッドフォンコードを追放する、コードレス化を打ち出してきても何ら不思議はない。アップル自身がBluetoothという無線規格へ強くコミットしていることも、このウワサとは無関係ではないだろう。
しかしながらiPodのコードレス化は果たされず、FMラジオ機能を追加する有線リモコン「iPod Radio Remote」が発表されたにすぎなかった。iPod Radio RemoteについてはFMラジオ機能の追加というよりも、リモコンジャックがなくなってしまった第5世代/nanoに対するフォロー的な意味合いが強いと思われる。
もう1つは低価格帯製品のてこ入れだ。
年末から年始にかけて「iPod shuffleが製造中止になっている(あるいはなる)」というウワサが流れ、そこから、「液晶搭載のshuffleが上位機種として登場するのでは」「メモリ容量を少なくした、iPod nanoの廉価版が登場するのでは」という推測がなされていた。
iPod nanoの廉価版については、今回の新製品によってそれが真実であることが確認できたが、iPod shuffleに関しては機能や容量などに変更を行わず、シンプルに値下げを行うにとどまった。1Gバイトタイプについてはnanoとshuffleが共存する関係になったのだが、ある程度可処分所得がある人ならば、同じ1GバイトメモリでもiPod nanoを選択することが多いと想像できる。
ではなぜ、同一容量で2製品が並ぶ事態となったのか。
2製品はそれなりに価格差もある(iPod nanoが1万7800円、iPod shuffleが1万1900円)が、価格表記をドルにすると、その理由の一端が垣間見える。iPod nanoは149ドル、iPod shuffleは99ドルとなり、shuffleは「100ドル以下のiPod」として位置づけられていることが分かる。
米国市場で学校・教育市場に強い同社としては、将来Macユーザーになりうる学生へのアプローチは欠かせないものとなっており、「アンダー100ドルのiPod」は利益率やシェアをある程度度外視しても必要な製品といえる。今回の価格改定でiPod shuffleは入門機としての色彩をより濃く持つことになったといえるだろう。
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