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電気用品安全法は「新たなる敵」か (Side A)小寺信良(3/3 ページ)

» 2006年02月20日 10時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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売買が禁止されるのか?

 とりあえず、今みんなが知りたいのは、何が許されて何が許されないのか、という点であろう。これはヒステリックな議論の中ではなかなか見えてこない部分でもあるので、冷静に情報を読み解いて行くことが必要だ。

 ポイントは、PSE法は業者向けの法律であるので、個人を対象にしていないという点が一つ。もう一つは、規制しているのはPSEマークの付いてないものの「販売」であって、「買い取り」を規制していないという点だ。

 中古市場のスタート地点は、一般消費者であると言える。つまり一消費者である個人が、PSEマークの付いていない自分の製品を売ることに関しては、何の問題ない。そして中古販売業者がPSEマークのないものでも、買い取ることは適法である。

 ただ現在は、「マークなし中古品を売る手だてがないので買い取りを止めている」、という事情がほとんど説明されていないため、PSE法で買い取りまで制限しているかのような錯覚が生まれている。業者が買い取ったものを売る作戦については、次回に取っておこう。

 ここで問題になるのは、どこまでが個人と見なされるのか、という線引きであろう。この部分は確かにグレーゾーンが存在する。だが少なくともネットオークションに関しては、今年1月31日に経産省が発表した、「特定商取引法の通達の改正について」というニュースリリース(PDFファイル)が参考になる。これにより、経産省がどこからを販売業者と見なすのか、逆に言えばどこまでが個人と考えているのかがわかる。

 細かいところは各々確認して貰うとして、ここで主要な内容部分を引用しておこう。

【1】 全てのカテゴリー・商品について

 例えば、以下の場合には、特別の事情がある場合を除き、営利の意思を持って反復継続して取引を行う者として販売業者に該当すると考えられる。
(1) 過去1カ月に200点以上又は一時点において100点以上の商品を新規出品している場合
(2) 落札額の合計が過去1カ月に100万円以上である場合
(3) 落札額の合計が過去1年間に1000万円以上である場合

【2】 特定のカテゴリー・商品について

 例えば、以下の場合には、通常、販売業者に当たると考えられる。
(1) (家電製品等)について、同一の商品を一時点において5点以上出品している場合
(2) (自動車・二輪車の部品等)について、同一の商品を一時点において3点以上出品している場合
(3) (CD・DVD・パソコン用ソフト)について、同一の商品を一時点において3点以上出品している場合
(4) (いわゆるブランド品)に該当する商品を一時点において20点以上出品している場合
(5) (インクカートリッジ)に該当する商品を一時点において20点以上出品している場合
(6) (健康食品)に該当する商品を一時点において20点以上出品している場合
(7) (チケット等)に該当する商品を一時点において20点以上出品している場合

 ただしこれは、特定商取引法に関するガイドラインである。PSE法の場合は、とにかく危ないものが大量に市場に出回ることを押さえるのが目的なので、上記の項目のうち、「営利の意志を持って」という部分は削除されるだろう。

 つまり利ざや部分が無く、原価で売ろうとした場合でも、上記の個数や期間などの条件が該当していくものと考えていい。

 またPSE法は、譲渡に関しては関与していない。だが、製品が危険なものと知りながら、お金をかけて廃棄するのがイヤだから無償で大量に譲渡しようという場合は、何らかの条件付きでPSE法の適用を受ける可能性はあるだろう。

 上記はネットオークションに関しての線引きだが、家電の安全に関して、ネットで良くてリアル店舗でダメとか、あるいはその逆が存在することはおかしい。したがってリアル店舗においても、いくつかの例外はあるにしても、概ね上記のような線引きになるのではないだろうか。

 次回(Side B)はPSE法が落とす電気機器業界への影と、法の本意を汲んでどのような動きが可能かをのグレーゾーンを探る。



小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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