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電気用品安全法は「新たなる敵」か (Side B)小寺信良(1/4 ページ)

» 2006年02月27日 11時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 前回のSide Aを書いてから1週間が経過しているわけだが、その間にもPSE法を巡る動きはあわただしく展開している。ネットの中でも署名運動や、Blogを通じて国会議員にアクセスするなど、組織的な活動も活発化しているようだ。

 この法に対して多くの人が抵抗を示している理由を今一度分析すると、中古品の流通までこの法が踏み込んでしまっているからである。しかし、ただ一口に中古とは言っても、実際には2層に分かれるだろう。

 1つは、それほど古くないものの中古流通で、まだ使えるのに勿体ない、というリサイクルの流れに沿った層。メーカーが中古市場を潰して新品を寄り多く売りたいんだろう、と考える向きもあるが、実態はその逆である。

 メーカーでは、まだ使える製品でもそれを下取りしてくれる市場があって、新品にどんどん買い直してくれるという現在の製品サイクルに満足している。大手量販店に中古買い取り事業をも行なっている例が多いのは、製品買い換えサイクルを促進する狙いがある。中古流通の受け皿があることは、メーカーにとっても販売店にとっても、メリットがある話なのである。

 もう1つの層は、いわゆるヴィンテージと呼ばれる、10年〜50年近く経過した製品の中古である。ヴィンテージものが大事にされる理由は、単にリサイクルやノスタルジーといった面ではなく、ほかに代替になる製品がないから、という実用面に基づいている。

 特に反発が大きいゲーム機などの場合は、古いソフトウェアを動かす手段が、古いハードウェアしかないという事情による。また同じく反発が大きい電気・電子楽器やオーディオの場合は、新しい製品では細かい差異が埋められないという「コダワリ」が基本になっている。実は筆者もOberheim Xpanderを後生大事に手放せないクチなので、この気持ちはよくわかる。

 PSE法本格施行開始まであと1カ月ということで焦りもあるだろうが、どうも議論が「悪法という前提ありき」でヒステリックになってしまっている様子も散見される。ここまで一省庁が悪者になった例というのは、近来まれに見る事態だ。しかし、ただいたずらに怒りを振りまいて「経産省を倒す」ってな話はお門違いであるし、そのあたりは我々も可能なことと不可能なことを勉強して、大人の対応をすべきであろう。

法の全体を把握する

 筆者は基本的に、この法に対する理解や、施行の実態ふまえておくことが重要であり、そこから新しい活路も見いだせると考えている。まずこの法がどのような体系を取っているのか、そこから調べてみよう。

 全体的な構図は、次の図のようになっている。これは経産省が公開している資料「製品安全4法パンフレット」(http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/index.htm)から抜粋したものである。なおこの図はこれから頻繁に参照するので、別ウィンドウで開いておいていただくとわかりやすいだろう。

photo 製品安全法例体系図。「製品安全4法パンフレット」から抜粋した

 流れの上の方から追っていくと煩雑なのでガバッと大枠を説明すると、まずこの法は、「製品流通前」と「製品流通後」のプロセスに二分される。まず「製品流通前」のポイントから見てみよう。

 旧電気用品取締法から今回の電気用品安全法への改正の目玉は、体系図【1】で囲った「適合性検査」の部分である。旧法では、特定電気用品は行政機関(代行機関も含む)の検査を受ける必要があったのだが、新法ではこの部分が民間の検査機関に委託できるようになった。

 またエラい遠いところから話始めたナ、と思われるかもしれないが、実はこうなった経緯こそ重要で、のちに示す解決案にも大きな影響がある。この変更の意味は、電器製品の製造技術も上がって来たことだし、国がこれらの検査まで全部抱え込むよりも、民間に任せて大丈夫と判断した結果なのである。

 そして特定品以外の製品は、自主検査だけでマークを付けて販売することができる。全体的に安全に対する責任を、自己責任主体に動かしたことになる。

 この路線変更は、小さな政府を目指す小泉政権の方針とも合致する。この、大枠に合致するということが実は大事な話で、どんな細かい事情も、大枠に合ってないと例外は認められないのである。

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