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記録型にもつながる? 2層BD-ROM製造の最前線次世代DVDへの挑戦(1/2 ページ)

» 2006年02月27日 12時31分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 米映画スタジオへのインタビューもあと2回を残しているが、その前に2層BD-ROM製造ラインの話題を紹介したい。

 今年は3月から東芝が北米でHD DVDプレーヤーを発売、同時にHD DVDソフトもリリースされるほか、日本国内向けにもHD DVDソフトが3月中に発売されることがアナウンスされている(日本でのHD DVDプレーヤー発売を保証するものではないが、その可能性があることは示している)。

 北米でのBDプレーヤー発売について、まだ時期を明言しているメーカーこそないが、映画スタジオの話によれば最短で4月、少なくとも夏ぐらいまでにはビジネスが開始されることになろう。

 すでに“BD-ROMの2層は本当に作れるのか”といった取材テーマは、その時期を外しているのかもしれない。発注元である映画スタジオが2層BD-ROMで製作したいといえば、デュプリケータ(ディスク複製業者)は、2層BD-ROMを納品しなければならない。“歩留まりがいくつ”といった話は、両フォーマットが統一される可能性のある時にのみ、消費者にとって意味のあるテーマである(複製コストがよほど大きく違わない限り、最終製品の価格には影響しないため)。

 とはいえ、2層BD-ROMを製造している現場、そしてテスターによる試験結果として、どのような数字が出ているのか。それは2層BD-ROMを量産する上で、現実的な数字なのか、非現実的なのか。松下電器がカリフォルニア州トーランスに持つPanasonic R & D Conpany of America(PRDCA)に構築している2層BD-ROM複製ラインを取材した。

photo PRDCAに構築されたBD-ROM複製ラインの2層化ユニット
photo 2層ディスク製造ラインの大まかな装置の構成。1層ラインに2層化ユニットをオプションで付加する構成を採っている

2層BD-ROMの難しさ

 BDのライバル規格であるHD DVDは、ROMの複製コストが安いことがメリットとされている。ROM複製が安価であれば、映画スタジオなど光ディスクコンテンツの販売でビジネスを行う企業が負担するコストが下がり、量産化によるコストダウンを行いやすいためだ。

 HD DVDの場合、DVDと物理構造が近いため、同一ラインでDVDとHD DVDの両方をサポートできる点もメリットだ。製造ラインを共有できるため、HD DVD事業立ち上げ時のライン稼働率が低くなりやすい状況でも、DVD向けとしてラインを活用できる。

 ただし、DVDとHD DVDでは精度が異なる。DVDの2層は層間スペースが55マイクロメートル±15マイクロメートルだが、HD DVDの2層ディスクは20マイクロメートル±3マイクロメートルとかなり厳しい(BD-ROMは25マイクロメートル)。とはいえ、この精度の違いは近年の技術進歩によって吸収されており、古いタイプの製造装置でなければ、ディスク基板の貼り合わせ行程部分などを改修することで、既存ラインをHD DVD対応とすることも可能なほど容易であると、HD DVD関係者は話している。

 一方、BD-ROMの難しさはDVDで蓄積されたノウハウがそのまま利用できない点以外にも、これまでいくつかの点が挙げられてきた。

 まずディスクの反りが出やすいこと。DVDやHD DVDは、全く同じ厚みのポリカーボネート基板を2枚貼り合わせて作るため、環境変化や吸湿などによってディスクが反りにくい。これに対して、BD-ROMは0.1ミリのカバー層と1.1ミリの基板で構成されるため、反りやすいというわけだ。

 また0.1ミリカバー層を高精度に形成する技術もまた、難しいとされる。ソニーは複屈折を抑えたフィルムを貼り付け、今回取材したPDMCはスピンコート法(紫外線硬化樹脂を遠心力で均一に塗り広げる手法)を用いているが、ソニーも将来的にはスピンコート法へと向かうようだ。

 スピンコート法での問題は、中心部から外周部にかけての厚みの均一性を保つことや、紫外線硬化樹脂が拡がる過程で泡が混入しないようにすること、外周部で通称“スキージャンプ”と呼ばれる盛り上がった土手が出来るのを防ぐことなどが難しいとされる。また2層化において、2層目の凹凸を作る手法についても、効率的な手法はないとの指摘が過去にはあった。

 ただし上記の問題に関しては、PDMCではすでにほぼ解決しているという。

photo 松下の開発したスピンコート法による2層BD-ROMの処理手順
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