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ターゲットが重なる110度CS放送とIP放送西正(1/2 ページ)

» 2006年03月03日 11時23分 公開
[西正,ITmedia]

三波共用デジタルテレビの普及

 地上波放送のデジタル化とともに、市場で強力な売れ行きを見せ始めたのが、地上波、BS、110度CSの各デジタル放送を視聴できる三波共用のデジタルテレビである。チューナーが3本あるのと同時に、液晶やプラズマをディスプレイとして使う薄型のテレビの登場が好評となった。日本の家屋事情からすれば、「場所を取らない」ことが大きなアピールポイントとなったことはうなづける。

 平均すれば1世帯に2台以上のテレビがあるわが国で、すべてが三波共用機に置き換わるわけではない。しかし、1億台も普及しているテレビの3割が置き換わったとしても3000万台になる。この数字はかなりのインパクトだ。三波共用機の登場によって最も大きなチャンスが到来すると思われたのが、110度CS放送である。110度CS放送の認知度が今一つであるにしても、それと関わりなく受信機が普及していく状況は追い風だ。BSデジタル放送用にアンテナを買ってもらえば、110度CS放送も受信できる。

 BS放送と同じ軌道位置にあるということで、免許取得時には大変な競争が展開された110度CS放送にとって、ようやく普及のチャンスが訪れたかに見えた。しかし、三波共用機が着実に普及し始めている実態と比べると、明らかに110度CS放送の加入者の伸び悩みが目立っている。

 理由は簡単で、相変わらずの認知度の低さに尽きる。

 三波共用機を購入する動機として、110度CS放送が見たいからという人はほとんどいないと思われる。新たに購入してアンテナもBSデジタル用の物を設置した人たちが潜在顧客と言えるのだろうが、よく知らないであろう110度CSをアピールするには、時機をどう考えるかが重要になってくる。有料の多チャンネルに魅力がないわけではないので、関心を持ってもらうことが先決だが、絶好のタイミングはテレビの購入時であろう。

 人間の心理からすると、高価な物を購入した時には、さすがに高価なだけのことはあるという満足感を得たいと思いがちである。

 高画質・高音質のハイビジョン映像は、その格好の材料となろうが、これまで有料の専門チャンネルを視聴した経験が少ない人にとっては、自分の好きなジャンルの番組が楽しめることも大いに満足感の材料となり得るに違いない。せっかく三波が受けられるテレビを買ったのだから、BS放送や110度CS放送も見てみようと思うのは自然である。

 有料に対する抵抗感も、高価なテレビの購入時には薄まっているはずだ。自宅を新築したり建替えたりした時が、家電製品の買い替え時と重なるのも、高価な買い物をした時には財布の紐が緩まることの証でもある。

 そうした事情を考えると、110度CS放送の認知度の低さが問題になってくる。有料放送とか多チャンネル放送といったところで、番組の中身が分からないのではアピールのしようがない。昨今では、チャンネル数の多さだけでは、「そんなにテレビを見る時間はない」と片付けられてしまう。

 三波共用機の購入時からしばらくの間、無料で視聴できるサービスがあるといっても、その期間中に1つ1つのチャンネルをきちんとチェックしているかどうかは疑問である。高価なテレビの購入から時間が経てば経つほど、改めて財布の紐も締まっていくことになる。

 テレビの購入時を加入者獲得の最大のチャンスとして活かすためには、電気店などにその月の番組ガイドブックを用意しておいてもらって、購入者にパラパラとでも見てもらうようにすることが必要である。番組のガイドブックの費用などは、数ある番供なりプラットフォームなりが拠出すればよかろう。テレビが家庭に届けられる時に、段ボール箱にガイドブックを入れてもらってもよいだろう。

 新しいテレビへの物珍しさから、必ず家族の誰かがガイドブックを眺めだすことは間違いない。テレビ番組の好みも人それぞれである。中身さえ分かれば、見たいと思うジャンルのチャンネルも必ず見つけ出されるに違いない。

 三波共用機の普及度合いと、110度CS放送の加入者の増加度合いは、連携しなくなる一方である。そうした状況を改善し、加入者獲得を進めるためには、テレビの購入時を絶好のタイミングとして捉えるようなマーケティング戦略が採られるべきである。

ケーブルテレビ経由でない世帯がターゲット

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