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中古販売実質容認報道の罠小寺信良(3/4 ページ)

» 2006年03月27日 09時30分 公開
[小寺信良,ITmedia]

3.24報道の不思議

 PSE法の問題に関して国会で精力的に活動を続ける民主党川内博史議員のブログによれば、24日午前の閣議後の記者会見で、二階大臣がすべての中古品を適用除外しないという方針を改めて述べた、とある。あいにくネット上のニュースではこの発言を報道しているものは見あたらなかったが、NHKなど放送メディアでは報道していたはずである。

 だがこの日の夕方午後4時15分、リサイクル業者で作る「PSE問題を考える会」の代表である小川浩一郎氏が、経産省と話し合いの結果として、以下の要望が了解されたと経産省で記者会見した。

1)検査機器の無償貸し出しなどの支援策とともに、検査機器の使い方や届け出書類などの作り方の講習会を日本全国でできるだけ早く開催する
2)販売後検査やレンタルなどに手段により、中古品の販売が継続できる
3)業者間での中古品取引で、国内に販売することが明らかになっていない流通の途中では、PSEマークがなくても取引できる
4)手続きなどの相談に丁寧に応じ、さらに制度の周知徹底に努める
5)4月1日法施行後もリサイクル事業者と話し合いを継続していく

ポイントとなるのは2)と3)で、まずここで販売後検査という手段があることが、初めて明らかになった。またレンタルという制度を用いることも、事実上経産省が了承する姿勢を示した。またこれまでPSEマークのない製品を個人が売ることは構わなかったが、業者同士の取り引き、つまり中古品仲介業者を通じての製品流通も可能になった。

 この業者間取り引きは、ストレートにPSE法に照らし合わせればダメなのだが、国内に販売することが明らかになっていなければいいわけで、つまり「あー日本で売るかどうかわからないナーどうしようかナー」「わからないネー」などと呟きながら製品を扱えばいいということになる。これはPSE法では、輸出を対象にしていないという抜け穴を利用した手段である。

 そしてその2時間半後、経産省発表として「中古品の販売 事実上容認に方針転換」と大々的に報道が始まることになる。

 だが考えてみて欲しい。その日の午前中まで、大臣が方針に変更なしと強弁している事態が、約5時間後には「事実上容認」とマスコミに書かれるまでの方向転換を行なったわけである。

 いくら「PSE問題を考える会」といっても、その日にこんにちはーとやってきて3〜4時間話しただけでガラリと変わるほど、政策というのはお気楽なものではないだろう。少なくとも事前に数日間かけて方針が練られていたはずだ。

 この方針決定に関して、省庁の大臣が当日の午前中までまったく知らないというのは、いかに大臣というものが機能を持たないものか、呆れるばかりである。

方針転換は事実上の容認か

 この報道によって、「中古販売問題はひとまず解決」と思われる方が、もしかしたら世間には多いのかもしれない。発表が金曜日の夜ということもあって、まだマスコミもあまり本格的な報道体制には入っていない。だが筆者はマスコミの「事実上容認」という表現に、疑問を持っている。

 記者会見の正確な会見録がまだ経産省のサイトで発表になっていないので、各マスコミ報道からつなぎ合わせて情報を再構築するしかないが、だいたい以下のようになるだろう。

1)販売業者と買い手の間で、商品受け渡し後に安全性の検査をすることを約束
2)商品受け渡しから検査が実施されるまでは「レンタル」と見なす
3)実際に検査するかどうかは、販売業者側の善意にゆだねる
4)この措置は検査機器が行き渡るまでの暫定的なものとする

この1)と2)については、「PSE問題を考える会」の記者会見における2)の部分を経産省なりにシステム化するとこうなる、ということであろう。そして3)、4)にあるように、検査を義務づけるわけでもなく、暫定期間も曖昧にしたことで、大手マスコミは「事実上容認」という表現を使ったものと思われる。

 だがこれは、いかにマスコミがPSE法の問題を理解していないかを露呈した、勇み足ではないか。なぜならば、ものすごく大事なことを忘れているからだ。

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