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”高画質”を強烈に印象づける「先行逃げ切り」――東芝HD DVDプレーヤー(2/2 ページ)

» 2006年03月31日 18時21分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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初期タイトル出荷時、画質・音質でやや優位なHD DVD

 実際、初期のHD DVDタイトルはBDの初期タイトルを上回るポテンシャルがHD DVDにはある。

 ハナシは簡単で、初期のBDソフトはほとんどが1層25Gバイトで制作されているからだ。現在手元に入ってきている情報を総合すると、ごく一部のBD初期タイトルが2層50Gバイトでの発売を狙っているようだが、2層BDソフトが増えてくるのは秋以降になるとみられる。

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 2時間以内のコンテンツならば、本来、25Gバイトでも十分な容量だが、オーサリングハウスごとに技術的なレベルは異なる。ものによってはHD DVDの方がビットレートを多めに取れる分、有利なケースもあろう。

 またBDとHD DVDでは、音声トラックのサポートにいくつかの違いがある。BDの方が必須要件となっているコーデックの範囲が狭く(リニアPCMは別として)ロスレス圧縮がオプションになっている。またDolby Digital Plusの仕様も、ややHD DVDの方が上位だ。対してHD DVDではDolby Digital Plusがフル機能な事はもちろん、ロスレス圧縮も必須要件として採用されている。

 つまり、BDでロスレス圧縮音声を扱おうとすると、Dolby Digitalも必ず入れておかなければならないが、HD DVDの場合はロスレス音声だけを入れておけばいい。また5Gバイト分の余裕があることで、ソフトウェアを供給する側も映像への影響を心配することなく音声フォーマットにより多くの容量を割り当てやすい。なにより”必須要件”であること自体が優位性になっている。

 もちろん、これは今年の年末が近くなってくれば、2層BDソフトによって優位性ではなくなっているかもしれない。しかし、初期出荷時の第一印象でHD DVDは高画質・高音質という印象を、次世代光ディスクに興味を持っている人たちに与えることはできる。

 成長にハッキリとしたかげりが見えているDVDタイトルの売上げを少しでも積み増したいコンテンツベンダーが、HD DVDのタイトル制作に真剣に取り組めば、HD DVDに対する消費者の心証がプラス方面で作用する可能性はある。また、先行することでBDのパッケージソフト登場時のインパクトを下げる効果も期待できるだろう。

 実際、標準添付の2本に関しては、やや解像感の甘さを感じたものの、4月に発売される数本のパッケージ、特に4月7日に発売されるポニーキャニオン「夜桜」などを見ると、初期タイトルの高画質化にかけた意気込みが伝わってくるようだ。今年1月のCESで流したデモ映像よりも高い画質でパッケージ化されている。

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 もっとも、東芝自身、プレーヤーだけで日本国内の出荷数を稼げるとは思っていないはずだ。日本市場での勝負はレコーダーになる。東芝・上席常務 デジタルメディアネットワーク社の藤井社長も「日本のDVD市場は60%がレコーダー」と話す。そして昨年、ハイビジョン対応ハイブリッドレコーダーは金額ベースで半分を超えた。家庭内の受像器がハイビジョン対応になり、放送あるいはダウンロード型コンテンツのHD化が進む中で、パッケージメディアや保管用メディアがHD未対応のままとはならない。

photo 東芝・上席常務 デジタルメディアネットワーク社の藤井社長

 その上位機種にHD DVDあるいはBDの記録型ドライブが搭載されるようになれば、積極的にプレーヤーを購入するユーザー以外にも、再生インフラが広がっていくからだ。

 近年はハイブリッドレコーダーの普及により、DVDへのアーカイブ率が減っていると言われるが、画素数で6倍となるハイビジョンはハードディスクへの録画時間が短い。必然的に光ディスクへのアーカイブというニーズは増加すると見られる。

 光ディスクへの録画においては1層の容量が大きなBDの方が有利。秋以降の録画機勝負になる前に、HD DVDソフトを揃え、HDパッケージソフトがハイビジョン放送に比べ、圧倒的に高品質であることをアピールできるか。そして、日本先行発売されるHD DVDプレーヤーがどれだけ消費者の中で話題となるか。その後のソフトラインアップがどうなるか。

 いよいよ製品として登場するHD-XA1を巡る動向、それにHD-XA1自身の製品としての完成度や品質に注目していきたい。

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