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次世代DVDへの期待と要望麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/4 ページ)

» 2006年04月01日 16時00分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 3月31日、東芝が次世代DVD普及の先陣を切ってHD DVDプレーヤー新製品を国内で発表、そして一気に同時発売にまで踏み切った。

 商用パッケージは未サポートながらすでに録再機をリリースしているBlu-ray Disc(BD)陣営も、ソニーや松下電器産業が普及を担うBDプレーヤーの今夏からの発売をアナウンス、また“BD普及の切り札”「PS3」も今年11月上旬には登場する見込みなど、次世代DVD市場が盛り上がりを見せている。それに呼応して、コンテンツベンダーからのHD DVD/BDタイトルのリリース案内も増えてきた。

 今回の「デジタル閻魔帳」は、“次世代DVDの宣教師”麻倉怜士氏に、いよいよハードとソフトが出揃う次世代DVDへの期待と、今後の展開にあたっての要望を語ってもらった。

photo HD DVDプレーヤー発表会場にて撮影

――次世代DVDでは従来のMEPG-2に加えて新しいコーデックが採用されていますね。

麻倉氏: 先日、ポニーキャニオンで次世代DVDのデモをみました。市販HD DVDコンテンツの第1弾となる「夜桜」「さくら nostalgia」「地球の大自然」の3タイトルです。これを観て、「次世代は、かなりすごいな」と実感しました。この3タイトルはいずれも映像圧縮方式に最新のMPEG-4 AVC(ハイプロファイル)を採用しています。このコーデックは、少ないビットレートでもハイクオリティな映像が得られるのが特徴。このMPEG-4 AVCを採用した点が次世代たるゆえんです。

photo ポニーキャニオンのHD DVDコンテンツ第1弾となる「夜桜」「さくら nostalgia」「地球の大自然」

 次世代DVDでは――HD DVDだけでなくBD-ROMもそうなのですが――3つのコーデック(MPEG-2、MPEG-4 AVC、VC1)の中から映像圧縮方式を選択できますが、今年1月にハリウッドへ取材旅行に行った時、ほとんどの映画会社が新しいコーデック、つまりMPEG-4 AVCやVC1を使いたいと口を揃えていました。

――新コーデックの中で、ポニーキャニオンはなぜMPEG-4 AVCを選んだのでしょうか?

麻倉氏: 私が「VC1との比較はしたのですか?」とたずねたところ「VC1も含め3つのコーデックすべてをいろいろ検証したが、最終的にテクスチャの違いでMPEG-4 AVCを選んだ」とのことでした。VC1がハッキリ輪郭を出す硬めの映像傾向になるのに比べて、MPEG-4 AVCは柔軟でしなやかで、ナチュラルだったようです。

――「次世代DVD=高画質」と喧伝されてますが、実際はどうなんでしょうか。

麻倉氏: ポニーキャニオンのコンテンツの場合、MPEG-4 AVCでのエンコード能力の高さというのはベースにあるのですが、それにも増して、どのくらいビットレートを与えるか、そしてもとのソースのクオリティがいかに重要かを実感しました。高ビットレートで高画質を狙ったスーパービットシリーズのような高画質DVDの例もありますが、やはりマスターのクオリティが末端のディスクも左右する。次世代DVDも、そこが重要だと感じました。

photo

 SD映像とハイビジョンの違いを考えてみると、解像度に限界のあるSDはあるところで画質追求を断念しなくてはいけません。SDはもともと、小さい画面を離れてみる“情報伝達”をメインとしているからです。一方、ハイビジョンの場合は、ホンモノ感が伝えられる。例えば、マスターフィルムの持つクセっぽさなどもリニアに届けられるのです。そういう事例は放送などの比較で分かってきていたのですが、それからすると、MPEG-4 AVCはかなりホンモノっぽい。我々が観たことのない映像を映し出してくれます。

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