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ユニデンが語る“最後発のテレビ作り”インタビュー(1/2 ページ)

» 2006年04月04日 21時20分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 思い起こせば昨年6月、ユニデンが液晶テレビを発売するというニュースが流れたとき、業界に驚きの声が広がった。ユニデンといえば、コードレス電話機で世界的に高いシェアを持つ通信機器メーカー。どちらかといえば、地味な製品で堅実な商売をする昔ながらの日本企業というイメージだったからだ。

 そのユニデンがデジタル家電に最後発で参入し、しかも32型液晶テレビの価格が14万円弱。家電業界には珍しい直販オンリーのビジネスモデルと合わせ、企業イメージとのギャップが鮮烈な印象を残した。

photo 13万9800円で発売された「TL32WRJ-B」(ブラック)

 同社がデジタル家電市場に参入したのは、「コードレス電話機と並ぶ事業の柱」にするためだ。もちろん、新規事業はすぐに軌道に乗るものではなく、デジタル家電領域のダイレクト販売も「非常にチャレンジングなビジネススキーム」と認識していた。しかし、「設計から製造、販売までを一括して行えるのはユニデンの強み」という自信もあった。

 「何もないところから、競争の激しい日本のテレビ市場に打って出る。何か特徴を出さなければならなかった」と話すのは、同社技術本部上席執行役員の板橋隆夫氏。社名はそれなりに知られていても、家電分野におけるブランド力はゼロに近い。そうした状況の中、同社が選んだのはマニア層向けの高機能テレビではなく、シンプルで低価格なテレビだった。

photo 同社技術本部上席執行役員の板橋隆夫氏。横は新製品の37V型液晶テレビ

 製品開発にあたり、まず力を入れる部分とそれ以外の部分を明確にわけた。たとえば、本来ならテレビの買い替えを促す材料になるはずのデジタルチューナーを省き、代わりに当時普及し始めていたHDMI端子を備えたのは象徴的だ。1本のケーブルで映像と音声の両方を伝送できるHDMIは使い勝手が良いうえ、デジタル伝送のためDVDレコーダーなど外付け機器のチューナーを画質劣化なく利用できる。それなら、ほかの機器のチューナーを使うことを前提にしたテレビがあってもいいはず、という判断だ。

 大胆な割り切り方だったが、市場はすんなりと受け入れた。「企画当初は、まだインタフェースとしてのスペックも完成していなかったHDMIだが、2005年の年末には、HDMI搭載のDVDレコーダーなどが多く登場した。まさに(戦略が)ハマった感じだ」(板橋氏)。昨年10月の製品発売と前後して他社からも同様の製品が相次いで登場した点も判断が正しかったことの現れだろう。

 一方、画質や音質といったテレビの基本性能に関しては力を入れた。もちろん自社で製造できない液晶パネルなどのキーデバイスは他社から調達することになるが、できる範囲で手を加える。「パネルやスピーカーは、いくつもあるグレードの中から最高のものを選ぶ。電気回路の設計は自社で行い、スケーラに関わるプログラマブルICなど一部は社内で開発した。ソフトウェアもスクラッチビルドだ。画質、音質については、一流メーカーに負けないように作ったつもり」(同氏)。

 デザインにも力を入れた。ボディカラーは白と黒の2色をラインアップし、「コストがかかるのを承知で」光沢仕上げにした。

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