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HD DVDプレーヤー「HD-XA1」の画質をじっくり観てみたレビュー(3/3 ページ)

» 2006年04月07日 18時45分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 加えてこのタイトルでは、撮影に使われているレンズの癖や被写界深度、ピンの位置などが実によく見えてしまう。被写界深度を浅く取ってぼかした映像が多い作品だが、映像がパンしていく途中に、フラフラっとピンの位置が揺らぐ様子がよく見える。

 またワイドレンズでの四隅、やや流れ目の解像感が低いボケた花の像が、パンで中央に流れてくるに従ってハッキリと見えてくる様子も、スクリーンにかじりついて見なくとも、一般的な試聴距離から判別可能だ。

 HD DVDソフト(BDソフトでも同じことだが)では、圧縮前の元ソースの品質が、そのまま出てきてしまい、HD DVDというフォーマットの限界が見えない。それだけ“器”として大きいということが現時点では言えるだろう。

 今後、BDソフトが発売されるようになれば、何かとHD DVDソフトとの比較が行われるに違いない。しかし、たいていのソフトの場合、元の映像ソースの品質を比べるだけになってしまう、という状況になるだろう。フォーマットの比較論なのか、映像ソースの品質比べなのか、きちんと切り分けておかないと、正しい評価が行えなくなりそうだ。

渾身の1枚を

 さて、HD-XA1に話を戻そう。

 昨期中の発売という時期を考えれば、2作品をバンドルせざるを得なかったという点は理解せねばなるまい。AACSのソフト向け鍵発行が始まってから数日内に申請を完了させ、即日にプレスをしてパッケージングしなければ、あの発売日には間に合っていなかったはずだ。市販ソフトを間に合わすことが出来ない以上、方法はほかにない。

 しかし、フルHD解像度の映像を丁寧に圧縮して収録できるという次世代光ディスクの能力を示すには、少々物足りなさを感じることも確かだ。「これはハイビジョン放送なんかとは比べものにならない」と誰もが思うような画質を想像していると、添付の2本には多少肩すかしを食らった気分になる。

 出来ることなら、“これこそがHD DVDの能力を示す典型的な例”と胸を張れるディスクを、たとえ10分ほどのデモ映像でもかまわないので、もう1枚バンドルされていれば、見方もずいぶん変わっただろう。“現在の添付2本の画質がHD DVDの能力である”と判断されてしまうとすれば、それは東芝にとって不幸なことだ。

 だが継続に取り組んでいれば、そうした渾身の1枚と言えるソフトが登場することだろう。まだ時間はかかるかもしれないが、まずはフィルムソースの高画質なソフトが発売されることを期待したい。

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