操作はシンプルだが、ファイルの転送に際しては注意すべき点がいくつかある。ひとつはファイル名。本製品はMP3のID3タグを読み取れず、SDメモリーカードのルートに配置されたMP3ファイルを、ファイル名の順番に再生していく仕様となっているからだ。
iTunesなどはリッピング/エンコード時に、ファイル名の冒頭へ「01」「02」……と数字を付け加えていくので、こうしたソフトで生成したファイルを利用するか、転送にWindows Media Player 10を利用する(転送時、ファイル名の冒頭に「01」「02」と数字を追加してくれる)などの工夫が必要だろう。
もうひとつはファイルの配置。通常、HDD内では楽曲ファイルを「アーティスト名」―「アルバム名」―(実際の曲ファイル)という構成で管理することが多い。しかし、本製品はフォルダを利用した階層構造への対応が不完全で、フォルダごと転送しても再生できないケースがたびたびあった。
時間の関係上、どのような対応状況になっているかを完全に把握することはできなかったが、
(1)「ルートにファイルを直接配置+ファイルフォルダ」の場合には、フォルダ内のファイルは再生されない
(2)「ファイルフォルダだけをルートに複数配置」の場合にはアルファベット順で先頭にあたるフォルダのみを再生する
――などの挙動を確認できた。
肝心の音質だが、付属のネックストラップ型ヘッドフォンを組み合わせた場合、お世辞にも良好とは言えない。中域がモコモコした明瞭感のない音で、低音の押し出しと高音の伸びも感じられない。ヘッドフォンとは関係ないが、曲冒頭や静かな部分でヒスノイズが発生しているのも気になる。
筆者が普段利用しているカナル型ヘッドフォン(オーディオテクニカ ATH-CK5)に取りかえてみたところ、音質に関してはかなりの改善が確認できた。どうしても音質が気になる場合には、ヘッドフォンの交換をお勧めする。
本製品の音質面や使い勝手だけをシビアに見れば、正直に言ってかなり辛い評価にならざるを得ない。ヘッドフォンの交換で音質はかなり改善されるとはいえ、人によってはヒスノイズはかなり気になるはず。操作性そのものはシンプルで分かりやすいが、転送したフォルダの構造にきちんと対応できないのはマイナスだ。
ただ、それらの不満点をすべて補ってもあまりあるのが、999円という“超”がつく低価格だ。999円でUSBケーブルやネックストラップ型ヘッドフォン、乾電池といったアクセサリまでも付属するのだから、コストパフォーマンスは抜群といえる。「SDメモリーカードに転送したMP3ファイルを再生する」という機能自体に過不足はなく、これだけの低価格ならば、多少のことには目をつぶれるというものだ。
SDメモリーカードこそ別売だが、デジカメを買い換えた際に使わなくなったカードを持っている人も多いはず。そうした手持ちのカードを組み合わせ、「ポッドキャスト再生専用」や「子供へのプレゼント」「SDカードごと自主製作CDがわりに配る」など、これまであまり現実的ではなかった利用方法を考えてみるのも、本製品の楽しさといえる。
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