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れこめんどDVD「銀河ヒッチハイク・ガイド」DVDレビュー(1/2 ページ)

» 2006年04月14日 12時41分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

「銀河ヒッチハイク・ガイド」

発売日:2006年3月17日
価格:3990円
発売元:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
上映時間:109分(本編)
製作年度:2005年
画面サイズ:シネマスコープサイズ・スクイーズ
音声(1):ドルビーデジタル/5.1chサラウンド/英語
音声(2):ドルビーデジタル/5.1chサラウンド/日本語

 昨年、アメリカとイギリスで同時公開され、記録的な大ヒットとなったSFコメディの超大作。それが「銀河ヒッチハイク・ガイド」だ。原作はモンティ・パイソンのメンバーとともに仕事をしていたというダグラス・アダムス。元々はBBCのラジオドラマとして生まれた作品だが、熱狂的なファンが増殖し、小説化、舞台化、テレビ化と様々なメディアに発展を続けた。

原作者の遺志を継ぎ、ようやく完成した映画版

 特に人気を博したテレビ版は2005年、日本でもようやくDVDになることで陽の目を浴びることとなった。そして2001年、ダグラスは3年に及ぶ執筆期間を経て映画版の脚本を完成。しかし、ダグラス本人は突然の心臓発作に見舞われ他界。彼の遺志を継いだスタッフたちが、映画を完成にこぎつけた。

 監督を務めたのはミュージック・クリップ界で輝かしい経歴を持つガース・ジェニングス。本作がデビュー作にも関わらず、大作をまかされた裏には、ダグラス・アダムス監督の遺志を継いだ「オースティン・パワーズ」のジェイ・ローチ監督と「マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズ監督の強い推薦があったから。そのほかの撮影、美術、衣裳などもガース・ジェニングスと長い付き合いのあるスタッフが採用されている。

 キャストは主人公のアーサーに「ラブ・アクチュアリー」のマーティン・フリーマン。WOWOWで放映されたドラマ「THE OFFICE」にも主演している。そして彼を地球から脱出させる異星人フォードにはラップでも有名なモス・デフ。銀河系大統領ゼイフォードには「コンフェッション」「マッチスティック・メン」のサム・ロックウェル。アーサーと恋に落ちる女性トリシアはズーイー・デシャネル。ゼイフォードと対立するカルト教伝道師に名優ジョン・マルコヴィッチ。声の出演で「ハリー・ポッター」シリーズのアラン・リックマンと「カレンダー・ガールズ」のヘレン・ミレンも参加している。

人類の皆さん、いままでエサをありがとう、そしてサヨウナラ

 物語はイルカの華麗なショーから幕を開けるが、ナレーションによると「人類は地球上で3番目に賢い存在で、イルカは2番目」とのこと。1番目は誰なのかはさておき、地球に危機が迫っていることが人類にさっぱり伝わらないイルカのもどかしさを明るく歌い上げたオープニングがメチャクチャおかしい。ここで乗れない人は本作を観ることをこの時点でやめた方がいいかもしれない。最後にイルカは「さようなら、今まで魚をありがとう!」とメッセージを残して消え去る。

 そして主人公アーサーの家が登場するが、道路建設の立ち退き工事のため、彼の家は強制撤去される瞬間だった。そんな彼の前に親友、フォードがやってきて、「大変なことが起きる!」とアーサーをガウンのままバーに連れ出してしまう。実はフォードは異星人で、地球が間もなく破壊されてしまうと告げる。その理由は何と、宇宙バイパス建築のため。地球はバイパス上にあるので、撤去のため破壊されてしまうのだ。フォードは以前命を救ってくれたアーサーに恩返しするために、一緒に地球を脱出するようと誘ってくれる。訳が分らないまま、宇宙船に密航するアーサーとフォード。

 一方、官僚主義的なヴォゴン人は地球を破壊する旨を地球人に伝え、一瞬にして、地球は消え去る。この時、アーサーの家を破壊しようとしたお役所の人間と全く同じ発言をしているのが皮肉が効いていて笑える。「地方行政に関心のない者に同情の余地はない」

 こうしてアーサーたちは銀河系大統領ゼイフォード(最高のぶっ飛びキャラ)や、彼にナンパされ地球から脱出していた女性トリシア、宇宙で最も憂鬱なロボット、マーヴィンとともに、宇宙の旅人には欠かせない銀河ヒッチハイク・ガイドを手に銀河系をさまようことになる。やがて彼らは地球創造の秘密に近づいていくのだが……。

ブラック&ナンセンスギャグが充満、これに乗れるか乗れないかが鍵

 ユニークなキャラクターに、全く先の読めない展開。正直言ってムチャクチャな映画だが、所々にイギリス人らしい皮肉が盛り込まれ、笑えるギャグが満載されているのがスゴイところだ。キャラクターでは落ち込んでばかりいるロボット、マーヴィンがデザインも中身も秀逸! 彼の性格はクライマックスで最大限に活用されるので、その見せ場も大いに楽しみにしてもらいたい。

 マーヴィンの声はアラン・リックマンが担当しているが、実際に気ぐるみを着て演じているのは「ウィロー」で主人公ウィローを演じていたウォーウィック・デイビスだ。「スター・ウォーズ」や「ハリー・ポッター」シリーズにも登場しているが、今回は久々にインパクトのある役を演じている。

 ジム・ヘンソン・クリチャー・ショップによる特殊メイクを駆使した宇宙人たちの姿もどこか懐かしい雰囲気を映画に与え、この映画をより魅力的なものにしている。また随所に挿入されているポップなデザインのアニメは“Shynola”という4人組が担当。こちらも皮肉たっぷりのジョークがこれでもかと盛り込まれ、センスの良さに驚かされる。

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