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「プラットフォームはできた。次はロボットの“遊び方”だ」――スピーシーズインタビュー:人型ロボット「ITR」(1/2 ページ)

» 2006年04月22日 04時49分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 スピーシーズが今秋発売する人型ロボット「ITR」は、ネットワーク対応の家庭用エンターテイメントロボットだ。携帯電話操作で「番組」と呼ばれるプログラムをダウンロードすると、さまざまな動作が可能になる。あるときは英会話の先生、あるときはダンサー、そしてあるときはクイズの出題者。新しい番組を入れるとロボットの声と動きがガラリと変わる様は、まさにエンターティナーだ。

photo 人型ロボット「ITR」。全高33センチ、体重1.5キロ。背中のIEEE 802.11gの無線LANアダプタにより、PCなどを介さずにネットワーク接続が可能。携帯電話からの操作で新しい「番組」をダウンロードできる。9月上旬には一般販売を開始する予定。予価は税込み19万円

 同社は番組配信のために、「RTML」(Robot Transaction Markup Language)を開発し、さらにパートナー企業の開発した番組配信サーバなども揃えてロボット向けのエンターテイメントコンテンツ配信というプラットフォームビジネスに乗り出す(発表記事)。ITRのビジネスモデルと、ロボットのユニークな“遊び方”について、同社の春日知明社長に話を聞いた。

photo 以前はソニーでAIBOを担当していたという春日社長。ITRのビジネスモデルには、AIBOやこれまでに同社が提供したロボットの経験がいかされている

――春日社長はソニーでAIBOの初代機から関わっていたと伺いました。同じように家庭用エンターテイメントロボットを作るにあたり、ITRを二足歩行ロボットにした理由から教えて下さい。

 「われわれは、あえて『二足歩行ロボット』とは呼ばず、『人型ロボット』と表現しています。それは、単に歩かせたいのではなく、人間の形にしたことで“表現力”を持たせたかったから。人型は、このロボットのキーポイントなんです」

 「たとえば、以前AIBOがミュージカルをするイベントがありましたが、犬型のAIBOでは片手(前足)を動かすことしかできませんでした。しかし人型であれば、上半身が自由に動かせるので、さまざまな表現ができます。それに、人型は重心が体の真下にくるため、意外とバランスがいいというメリットもあります」

――ネットワークを利用して情報をダウンロードするというアプローチは、これまでの家庭用ロボットにもありましたが、声や仕草まで変わるという部分は新鮮です。

 「家庭用ロボットで大切なことは『遊んで面白い』という点でしょう。今までの家庭用ロボットは、単体でさまざまな機能を持たせようとするあまり、メモリ容量やコストといった壁に突き当たっていました。しかし、サーバにコンテンツを置き、いつでも接続できるようにしておけば、毎日ロボットの動作を変えることができる。せっかく購入したロボットが、部屋のオブジェにならないよう、面白い遊び方を提案し続けることが大切でしょう」

 「もちろん、われわれだけで面白いものを作り続けるのは難しい。ですが、番組をダウンロードする仕組みがあり、それがオープンなプラットフォームとして提供されていれば、誰かが面白いものを作ってくれると思います。それは、ゲーム機とゲームソフトの関係と同じです」

――表現力を高めるという点で、新たに「SYGSA」(=仕草)ライブラリを開発されましたが、具体的にどのような役割を持つのですか?

 「SYGSAは、人のような仕草を通じて、情報を伝達するためのライブラリです。見た人が『ああ、そうか』と共感できるようなモーションをロボットが表現できるようになります。まだ未整理の部分もありますが、たとえば発表会のデモンストレーションにあった『ダンス』で使用したモーションや、『落語』で使った言葉などを整理していくことを考えています」

――ネットワーク接続という点ではRTMLを提案していますが、これはどういうものですか?

 「Webで使用するHTMLに近いものです。HTMLが画面を制御する代わりに、RTMLはロボットを動かす。具体的には、各番組の流れ(順番)とともに、ロボットの動きを制御するモーションデータ、サウンド、光(LED表示)などのデータが含まれます。番組の転送には、HTTPやSOAPといったプロトコルを使用します」

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