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NHK技研公開――未来の超高画質放送からテレビ版ブログまで(1/2 ページ)

» 2006年05月23日 18時28分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 今年もNHKの放送技術に関する総合研究時「NHK放送技術研究所」が、最新の研究成果を一般公開する年に一度のイベント「技研公開」の時期がやってきた。本来の一般公開は5月25日からだが、先駆けて行われた関係者向けプレビューに参加してきた。

2007年度のサーバ型放送サービスを目指して

 昨年の公開は研究所開設75周年ということで、テレビの歴史をふり返る特別展示が用意されていたが、今年はデジタル放送の本格化を受け、今後のデジタル放送の展開や、関連した要素技術など、「近未来のテレビ」を予感させる展示が目立った。

 来場者をまず出迎えるのは、放送と通信の融合でどのようなサービスが提供可能かを示す各種のデモ。

 NHKは2007年度にサーバ型放送のサービス開始を予定しており、実際にホームサーバを利用したデモを見ることができる。デジタル放送の受信やNHKアーカイブスからの番組購入が可能なほか、家族ごとにカスタマイズされたポータル画面でニュースや好みに応じた番組を表示するなど、より個人のニーズを細かく反映させるサービスイメージが提示されている。

photo 放送と通信の融合の一例「NHKファミリーポータル」。テレビ視聴のほか、インターネットを利用したニュースの取得、NHKアーカイブスからのVOD番組購入なども可能
photo DRMの研究も進められている。ホームサーバに蓄積されたコンテンツを、著作権を保護しながらDVDや携帯機器へコピーするデモ

 ワンセグの開始で利用者増が見込まれる携帯機器向けの放送についても各種の展示が行われている。ワンセグには災害時に警報情報を放送する「緊急警報放送」(EWS)というシステムが用意されているが、消費電力の問題もあり、まだEWS受信機能を装備した携帯機器は登場していない(車載用受信機にはEWS受信機能を備えた製品が登場している)。

 展示されていたのは、待機電力を従来の1/10以下に抑えることで、携帯電話などでもEWS受信機能の搭載を可能にする回路。電力の低減を行うほか、EWSを受信すると自動的に電源が入る自動受信機能も備えるため、この回路を搭載した機器が増えれば災害時の情報伝達がよりスムーズになる。

開発が進むスーパーハイビジョン

 2025年の実用化を目指して開発と研究が進められている「スーパーハイビジョン」だが、より実用化に向けた研究が進められている。

photo スーパーハイビジョンカメラ

 スーパーハイビジョンは、7680×4320ピクセルの解像度を持ち、最大で22.2chのサラウンド音声を伝達可能な次世代の高精細放送。愛知県で行われていた「愛・地球博」にも出品されていたので、その映像を見た人も多いのではないだろうか。

photo 会場にある450インチのスクリーンでスーパーハイビジョンの映像を実際に見ることができる
photo 22.2chサラウンドのウーファー。22.2chサラウンドには高さの概念が導入されており、上層に9ch、中央層に10ch、下方層に3chが用意される

 今年の技研公開では、一般家庭に放送する際に欠かせない符号化技術についての展示が行われていた。スーパーハイビジョンは最大で映像24Gbps/音声28Mbpsの帯域を必要とするが、開発された符号化技術を用いることで、映像は180M〜600Mbps、音声は7Mbpsまでの圧縮が可能になった。

photo 会場入り口に設けられたスーパーハイビジョンカメラからの映像をリアルタイムに圧縮/伸長し、モニターに映し出している。映像のビットレートは250Mbps
photo スーパーハイビジョン用レコーダー。1.2TバイトのHDDを搭載するが、600Mbpsの映像だと4.5時間しか録画できない

 開発した符号化技術によって大幅な圧縮が可能になるものの、テラバイトクラスのHDDを搭載したレコーダーですら10時間ほどの録画しか行えない。そのために、さらなる高圧縮化にも取り組んでいる。現在研究が進められているのはH.264(MPEG-4 AVC)をベースとしたもので、既にスーパーハイビジョンの高精細映像に対応するための実験を行っているという。

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