薄型テレビとデジタルハイビジョン放送の急速な普及で、高精細な映像を大画面で楽しむ環境が整ってきた。だが、映像とサウンドが一体となって作り上げられている現代のさまざまなコンテンツを最大限に楽しむためには、映像だけでなく“音”にもとことんコダワリたい。それには、標準装備の内蔵スピーカーでは、あまりにも力不足だ。
今回の「デジタル閻魔帳」は、セットで数万円の普及タイプから1台が数百万円の高級機まであらゆるスピーカーを試聴し尽しているオーディオビジュアル評論家・麻倉怜士氏に、従来のオーディオシステムとは違った視点で“大画面テレビにふさわしいスピーカーシステム”を指南してもらった。
――テレビの大画面化が進み、これまで以上に“音”の重要性が指摘されていますよね。
麻倉氏: “音の選び方”には大原則があります。映像とイコールでなければならないということです。テレビという世界で音を考えた場合、大きな画面に対して装備するスピーカーが圧倒的に小さい。極端な話、画面と同じぐらいの面積をスピーカーに与えないと、画面と音の質的なレベルは同じにならないと考えていいかもしれません。
テレビのスピーカーの変遷をたどると、90年代前半にゴージャスにしようという動きがあり、そのときはすごく大きなスピーカーボックスをつけたテレビが登場したこともありました。ですがテレビ全体の歴史からみると、映像重視で音は二の次という傾向が長い間続いてきました。
テレビの役割が情報伝達メインだったブラウン管時代はそれでもよかったのですが、大画面・ハイビジョン時代になって、映像にホンモノらしさが感じられるようになってきました。そうなると、その映像にふさわしいように音の表現力も向上しなければいけません。昔の小画面時代よりも今の方が音の重要性ははるかに高まっているといえますね。
――最近のテレビでは、内蔵スピーカーの音のよさを売りにしている製品も増えていますが。
麻倉氏: テレビ内蔵のスピーカーは、基本的に人の声を忠実に再現するためのものです。情報伝達ツールとして使うなら内蔵でもいいのですが、大画面テレビをシアター的に使うとなると音の質的な条件が違ってくるので、そのあたりが音に目覚める時ですね。
現代に要求される“音”には2つの大きな条件があります。1つは「いかに原音に忠実か」という点、もう1つは「臨場感、空気感をいかに再現するか」という点です。
例えば、プラズマテレビの横に2chのスピーカーを置いてクオリティを向上させるというのは従来からのステレオの延長の考えでいいのですが、臨場感となると5.1chなどマルチchでのサラウンドシステムでないとトータルな感動性が高められません。クオリティも大事ですし、サラウンドとしての臨場感も大事。この2つをバランスよく組み立てるのが、現代のホームシアターの条件ですね。これをテレビ内蔵スピーカーに求めるのは酷です。
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