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大画面時代のスピーカーの選び方麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2006年05月31日 23時58分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――音楽・映画、両方に使えるスピーカーが必要になってきたわけですね。

麻倉氏: ここ20年ぐらいのスパンで考えてみると、80年代後半から映像化の波がきて、スピーカーが大きく変わってきたな、と感じました。それまで音楽再生を目的に原音再生を求めていたスピーカーが、90年代にはいって質的な転換を図り始めました。

 音楽が入ってきたときは忠実に音楽を再生し、映画の音が入ってきたときはリアリティのあるシネマサウンドを聴かせてくれる。多様性が生まれ、表現力が格段に上がってきた“バーサタイル”なスピーカーが最近は増えてきました。

――“バーサタイル”なスピーカーの製品例を具体的に挙げてもらえますか。

麻倉氏: 今年イチバン感動したのがイギリスの名門 KEFの5.1chスピーカーシステム「KHT3005G」です。これの前モデルとなる「KHT2005.2」も素晴らしい音を出していたのですが、「KHT3005G」はバーサタイル性がさらに向上しています。音楽の骨格感がしっかりして立ち上がりもよく、音楽を安定してゆるぎなくたのしめるだけでなく、映画の広大なダイナミックレンジを凄まじいリアルさで再現できる製品に仕上がっていました。特に剛性の高い音再現が素晴らしい。音の器量が大きくなりましたね。

photo KEFの5.1chスピーカーシステム「KHT3005G」

 もう1つは、やはりイギリスの名門 MONITOR AUDIOの「Gold Signature」シリーズ。このスピーカーは特に音楽再生能力を評価したいですね。微小信号をていねいにとらえ、音の歪みを抑えて透明感があり、なおかつ音楽が剛性感のあるものになっています。

photo MONITOR AUDIOの「Gold Signature」シリーズ

 最近のいいスピーカーの特徴は、単に2chとしてだけで終わらず、マルチチャンネルでのラインアップをしっかり用意して、システム展開している点です。5.1chとして聴く場合の重要なポイントは、音が移動したときに音色に不自然感があってはならないこと。フロント2chだけいいスピーカーでも、ほかのスピーカーとのミスマッチがあってはダメです。「Gold Signature」などは2chで良い音なのに加え、センター、リア、スーパーウーファーなどもちゃんと用意してシステム展開にも対応しています。ハイエンド製品でも、このようなシステム展開の動きが出てきたのが最近の特徴ですね。

photo ELAC「330.3 JET」

――システムでなくても、マルチチャンネルすべてを小型で高性能なスピーカーで揃えるという選択肢もありますよね。

麻倉氏: それならELACがオススメです。ELACのスピーカーは、小型なのですが実に俊敏に反応してくれ、透明で同時に深い。音の練り上げ方が秀逸で、粒子感が細かいのです。今イチバンの注目は「330.3 JET」。JETというアルミツィーターが特徴なのですが、今回の製品は磁気回路がフェライトからネオジウムに変わって、さらに音質に磨きをかけました。

 2chでの音楽の再生もいいのですが、小型筐体を生かしてマルチチャンネルのすべてを「330.3 JET」で揃えたサラウンドシステムは「こんな高品位なサラウンドがあったのか」というぐらい自然で、なおかつ剛性感・安定感があり、ユニットなりもせずに落ち着いて音が響く。いいスピーカーを均一に鳴らした時の喜びは、波面が均一になって安定したよどみないなめらかな感じに包まれるようです。

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