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れこめんどDVD「リディック(HD DVD)」DVDレビュー(2/2 ページ)

» 2006年06月09日 08時43分 公開
[飯塚克味,ITmedia]
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各シーンを詳しくみてみよう

 CH−2は氷の惑星でリディックが賞金稼ぎに追われるシーン。長年、この星にこもっていた様子がリディックの長髪と髭からよく分かる。このシーンでは吹雪になっているが、髪や髭にわずかに付着した雪の感じもリアルだ。DVDではここまで見えることはない。

 CH−3では賞金稼ぎの船を奪って、宇宙に旅立つリディックの姿が描かれるが、宇宙空間から宇宙船の計器、そしてリディックにフォーカスが移っていくVFXのカットも見事。星の数、計器の表示など全てが目に刺さってくるほどよく見える。プラスチックの容器に付いた汚れもよく分かるので、今後いい加減に映画を作れば、見ている方にはすぐバレてしまうだろう。

 CH−4で惑星ヘリオンに到着。地上すれすれに飛行し、徐々に都市が見えてくるカットは、DVD時代からお気に入りだが、この画を1度見てしまったら、もう後戻りはできない。時折映る水面の美しさも印象的だ。この惑星の住民の服や持ち物は中東をイメージしたと思われるが、1人1人の衣裳も静止画にして、チェックしたい衝動にかられる。

 CH−5ではリディックを、ネクロモンガーの征服から救出してくれるよう探していた謎の女性エアリオンが登場。演じるのは「007」でもおなじみのジュディ・デンチだが、彼女の衣裳のきらめきもすごい。本当に宝石が輝いているように見える。

 CH−7ではいよいよネクロモンガーによる侵攻が始まるが、ネクロモンガーの中に人体を察知する際、血管を透視する主観映像が出るが、これは日本映画「SHINOBI」の方が丁寧に作ってあった。一見、どうでもいいようなことだが、わずかな期間のVFXの進歩を実感できるのもHDの長所であり、短所であるかもしれない。

 CH−9で舞台はネクロモンガーの母艦に移るが、悪の頭領、ロード・マーシャルの宮殿が青いトーンで描写され、そのデザインに圧倒された。リディックは1度ネクロモンガーと対峙するが、彼らから脱出し、過去に自分が救ったジャック(実際は少女で、キーラという)がいる監獄のある惑星クリマトリアへと向かう。

 CH−12から登場するクリアマトリアは、日中は表面温度が700度だが、夜になるとマイナス300度になってしまう、温度差の激しい惑星だ。ゆえに地下の監獄から脱出しようにも、生き延びられないというシステムになっている。またここでは、どう猛な犬のような生物に囚人をエサとして与えるという野蛮な行為も日常的に行われていた。生物はCH−15で登場するが、さすがに想像上の生き物はHD画質ではかなり厳しい。ジョージ・ルーカスならきっと作り直して別バージョンで発表するだろう。

 CH−18でリディックたちは脱出に成功。宇宙船のある場所まで走っていくことになるのだが、日が昇ってくると地上は全て火山が大噴火したような状態になるので、大急ぎでいかなければならない。ここでリディックたちと脱出する他の囚人が振り向いた時、瞳に一瞬映る空の明るみが非情にクリアに映り、緊張感をいやがうえにも増してくれる。度々挿入されるロングショットの迫力もDVDとは別次元のものだ。リディックはこの後、追ってきたネクロモンガーにキーラを奪われ、最終決戦に出向くのだが、以降のクオリティもDVDとは比較にならない。

 中にはWOWOWでのハイビジョン放送を見ている方もいるだろうが、信号の安定感ではやはりディスクメディアの方が有利に思えた。また字幕のサイズも小さく、日本語吹替版を簡単に見ることができるのも大きなメリットだ。

いくつか不満をあげるとすれば……

 残念なことと言えば、全米でリリースされている「ディレクターズ・カット」が未収録なこと。しかし全米のファンからしたら、逆に「劇場公開版」は日本だけのリリースなので、そちらを欲しいと言われるかもしれない。またDTSの収録も実現して欲しかった点だ。ドルビーデジタルプラスの音響は非常に細かい音も再現しているが、若干レベルが低い。DTSならば、本作が持っている凄まじいまでの世界観をより強固なものにできるはずだ。ドルビートゥルーHD、DTS-HDならどんな音響世界が体験できるかという期待も高まるが、現時点では次世代音響フォーマットはまだ対応アンプもないので、それはこれからの楽しみというところか。

 HD DVDの売りのひとつであるポップアップメニューは、本編を見ながらチャプター選択や音声・字幕の変更ができて重宝だが、この作品ではチャプター選択時に文字表示しかないのは不満だ。次からはアメリカ版のように、チャプター画像も同時に表示して欲しい。

特典はDVD「コレクターズ・エディション」とほぼ同内容

 特典はDVDの「コレクターズ・エディション」に2枚に分かれて収録していたものを再構成してほぼ全て収めている。内容は「削除されたシーン」「リディック・ワールド ヴァーチャル・ガイド」「カテゴリー別に紹介するメイキング・ワールド」「プロダクション・カレンダー」「エスケープ・フロム・ブッチャー・ベイ」「トゥームズの追跡記録」「ビジュアルエフェクツ解析」「米国プレミア上映独占インタビュー」「日本版各種予告編」「スタッフ&キャスト プロフィール」となっている。

 個人的に楽しめたのはリディック捕獲に熱心な賞金稼ぎトゥームズが解説する「トゥームズの追跡記録」。彼のこれまでの行動が分かり、世界観を広げてくれる。またプロフィールはDVD発売時以降の情報も修正されている点は評価したい。

このクオリティなら5040円も妥当か

 価格は税込みで5040円。「リディック」の2枚組「コレクターズ・エディション」のDVDと同じ価格だけに、一般の感覚ではちょっと高めに感じるかもしれない。しかし大画面再生を楽しんでいるホームシアターファンならば、現在リリースされているHD DVDソフトの中では欠かすことのできない1枚として、太鼓判を押せるクオリティだ。是非その高画質は自身の目で確かめて欲しい。


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